第90話 のんびり

屋敷に着くとすぐに夕食を済ませて眠る。

ベッドの上で

(ああ~、やっと帰ってきた。本当にしんどかった。もうひたすらだらだらしたい。)

(あと二か月もすれば学園入学ですからね。)

(泣けてくるな。あんなたいして娯楽もないところで4年間とか。)

(友達がいるじゃないですか!!)

このやろう、ほんとに最悪な奴だ。それ以外に感想が思い浮かばない。

(うるせぇ、ただの知人だ。友達じゃねぇ。)

(照れなくていいんですよ。全部わかってますから。)

うぜぇ、こいつ、命令を出してやる。

(そうかよ。お前に出そうと思ってた命令を忘れてた。)

(えっ、明らかに、今思いつきましたよね。)

(そんなことはない。いいか牛鍋の食材をかき集めてこい、一年分だ。)

(そんなに集めても食べきれませんよ。)

(知ってる。でもそれだけ欲しい。)

(はぁー、人生の汚点が増えますよ。食材を無駄にするんですか?)

(仕方ない、俺の気持ちが最優先だから。つーかこれは、お前に対する嫌がらせだからな、早く行ってこい。)

(全部白状してるじゃないですか。はあ~、分かりましたよ。今回は私が揶揄いすぎたせいでもありますから。)

そういってパールは出かけていく。

ああ、楽しみだ。早く食べたいな。

そんなことを思っていると、いつの間にか寝落ちしてしまっているのだった。


翌朝、目が覚めると昼前だった。

さすがに帝都から帰ってきたばかりだから、早くには起こされないか。

はぁ~、この2か月は貴重だからな、どうやって過ごすか決めないとな。

う~ん、やっぱり冒険者活動をしたい。南の方だったら銀仮面でも大丈夫か?

あの白髪の女にだけ注意すれば問題ない。いざとなれば転移があるけど振り切れないかもしれないからな、ほんとにSS級冒険者は異常者の集まりだ。

まぁ、会わなければ大丈夫だろ。それよりも残り時間を楽しもう。

それとあの帝都で買った本も読むか、あれは純粋に面白そうだしな。

これからの予定を決め、ご飯を食べに向かうのだった。

そこには両親の姿はなかった。

「おはよう、ミリア。父上たちは?」

「もうすでに起きられていて、今は仕事をされております。奥様はその補佐をされています。」

…毎回思うけど、うちの領って人材不足なのか?、普通、妻はティータイムとかするんじゃないの?、これは俺の偏見だったのか?

パールが帰ってきたら聞いてみよう。

「そうか。なあ、母上はあっさりミリアが元近衛騎士団長ってバラしたよな。」

「まぁ、ジン様たちが大きくなるまでは内緒でお願いしますと言っていましたからね。ジン様が学園に入学する時期に近づいているので、もう話しても大丈夫だと判断されたのでしょう。」

俺にはアレナがそこまで考えて話したとは思えない、思慮の浅い女だからな。

「へ~。でも学園って疲れそうだよな。上級貴族の子供もいるだろうし。」

「それこそ大丈夫ですよ。帝都でも上級貴族の子たちと素で話してたじゃないですか。私の方がヒヤヒヤしました。」

やっぱりあれっておかしかったのか。

「そんなに?」

「はい。普通はもう少しぎこちなくなるはずですよ。」

「なるほど。でもまあ、あれでよかったんじゃないか。皆に驚かれた顔をされた時もあったけど。」

「そうですね。」

その後、朝食兼昼食を食べ終え、部屋に戻る。

冒険者活動はパールが戻ってきてからにするか。

それまではあの本を読もう。

「失われた秘宝か。前世でもラウンドブリリアンカットされたダイヤモンドは一番綺麗に見えたからな。やっぱり宝石ってのは人を魅了するんだろうな。」

そんなことを呟いて、本を読むのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る