第29話 帝都到着

「時間もあんまりないからね。早く行こうか。」

誰のせいだ誰の。

「父上、手紙はいつ来たんですか?」

「…えっ、…結構前かな。その、他の書類に紛れてて気づいたらぎりぎりだったんだ。」

「「はあ」」

俺とマルスの溜息が重なる。

きちんと整理しないとだめだろ。

意外と抜けてるよな。

「ほら、グズグズ言っててもしょうがないでしょ。時間は止まってくれないのよ。」

「そうそう、早く行けばまだ間に合うしね。」


そこから急ピッチで進み、俺たちはとくにトラブルもなく帝都に到着した。

「ようやく着いたね。パーティは明後日だから明日はのんびり出来るよ。」

アレクがなにか言っているが、俺とマルスはそんなことは頭に入って来なかった。

帝都が凄すぎる。

いやーでけえなぁ、帝都は。

しかも、街並みもきれいだし。

日本の大都市で慣れてるおれもびっくりした。

「人が多いね。こんなの初めてだ。」

「そうだね、マルス兄さん。」

「ふふ、私も初めて来たときはビックリしたわ。」

それにしても意外といい時間に到着した気がするな。

明日は帝都の探検でもするか。

「父上、明日は帝都を散策してもいいですか?」 

俺が尋ねると

「僕たちはパーティの用意があるから、行けないけど、ミリアと一緒に行くならいいよ。」

そりゃ、一人じゃ駄目か。貴族の子供だからな。

でも他に使用人もいるのに何でミリアなんだろ?

武芸に精通しているとか?

「やったー。」

「楽しみだね、ジン。」

「よろしく頼むわね、ミリア。」

「はい、お任せください。」


その夜、

「うわー、美味しそうですね。見たことがない料理ばっかりです。」

こ、これは天ぷらか?

揚げ物なんて久しぶりだ。

泣きそう。

「あら、とても美味しいわね。」

「そうだね。」

俺たちはとてもうまい料理に満足したのだった。


俺とマルスは部屋が同じだったので、俺は布団に潜ってパールに小声で話しかける。

「なあ、今日の料理は再現できるか?」

「可能ですよ。ただ材料がないので家に帰っても作れませんよ。」

「なら、バレずに貴族たちから材料を盗むことはできるか?」

「余裕ですけど、普通に犯罪ですよ。」

ふっ、俺は知ってる。

この世界に監視カメラがないことを。

なら証拠は盗んだ物くらいか、証人ぐらいだ。

「問題ない。姿を見られないよう注意してスクエアに保管すればいいだろ。」

「本当にクズですね。」

「違う違う、俺は弱いものから盗むんじゃなくて権力者から盗むんだからな。義賊だ義賊。」

「義賊に失礼ですよ。まあ、マスターの指示なので従いますが。」

「あぁ、頼むよ。じゃあ俺は明日に備えて寝るわ。お休み。」


ーーーーパール視点ーーーー

はあ、本当にどうしてマスターはああいうふうに育ったんでしょうか。

まあ、一緒にいて退屈はしないんですけど。

私は常に学習しているのですが、マスターの言動はいつも自分の利益のために一貫しています。わたしの考えが変わるほど。

その信念がぶれる日が来たならば、とても面白いことになりそうです。

…私は面白いと感じているのですか。

博士が目指した形に近づいていますね。

でも、今はマスターからの任務を遂行しますか。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る