第30話 散策
「ジン、起きて。朝だよ。」
「…ん、もう朝?」
「そうだよ。ジンっていつも朝遅いよね。」
「俺は夜型だからね、太陽の光に弱いんだ。」
「ほら、早く着替えて。ご飯食べたら帝都を見て回るんでしょ。」
「うん、分かってるよ。ふぁ〜あ。」
俺たちは朝ごはんを食べ終わり、帝都へ繰り出すことになった。
「ちゃんとミリアの言うこと聞くのよ。」
「大丈夫ですよ。母上、子供じゃないんですから。」
「子供じゃないの。それにあなたに言ってるのよ。」
「えっ、俺ですか?」
解せぬ。
「ジンは気づいたらいないからね、ちゃんと見張っとかないと。」
あぁー、こっそり依頼とか受けてたからな。
「ちゃんと夜ごはんまでに帰ってくるんだよ。まあ、ミリアが居たら大丈夫だと思うけど。」
「お任せください旦那様、ジン様から目を離しません。」
げぇ、見張られんのはいやだな。
(日頃の行いですね。)
(うっせえーよ。ただ自由に生きてるだけだろ。)
(そのせいでこうなってるんですよ。)
(けっ、昨日はちゃんと仕事したんだろうな?)
(もちろんです。当分の間、余裕がありますよ。ちゃんと計画的に使いましょうね。)
…最近生意気だな。
回路ぶち壊してやろうか。
どうやってパールをキレさせるか考えているとミリアが
「お二人はどこに行かれたいのですか?」
と聞いてきた。
「僕は本屋に行って、英雄譚を買いたいな。」
えー、もういいって。変なフラグが立つからやめてほしい、マルスよ。
「僕は…、魔道具が売ってる店に行きたいな。」
「分かりました。では、本屋から行きましょう。」
「あれっ、ミリアは帝都に詳しいの?」
「はい、奥様の実家である公爵家に仕えてたときによく買い出しに行ってました。」
よし、流そう。触れたらあかんやつや。
「じゃあ、ミリアは母上についていったということ?」
マルスゥーーー、お前、一回痛い目見ないとわからないようだな。
そうなってからは遅いときだってあるんだ。
「はい、そうですね。だから、私も毛嫌いされていて公爵家を出禁になってます。」
…八つ当たりとかされないよな。
嫌われてるやつ多すぎだろ、泣けてくるわ。
そうやって歩いていると、
「着きましたね。ここが帝都の本屋です。」
「大きいね。」
「そうだね、よーし、たくさん買うぞ。お小遣い全部使うんだ。」
おおー、豪気だね。俺も無駄使いするタイプだから共感できるわ。
「これと、これとこれと、…、よし決めた。」
そういって、マルスは十冊の本を買っていた。
「お小遣い、全部は使えなかったよ。」
「全部なんて駄目です。コツコツ使いましょう。」
さすが、ミリア。融通がきかないな。
…ヒエッ、睨まないでよ。
「では、次は魔道具のお店ですね。」
「おお、ここが魔道具のお店か。」
「なかなか味のある外見だね。」
中に入っていくと色々なものがあった。
扇風機や、ストーブ、ライター、ガスコンロのような見慣れたものが置かれていた。
マルスは、はしゃいでいるが俺は全然楽しめなかった。
はぁ、こっちにもこういうのあるのか。
金出してでも買いたいとは思わないな。
あたりをうろついていると
「おっ、お客さんかい。よく見て買っていってくれよ。」
強面の店員が話しかけてきた。
…なんか俺って、おっさんに縁があるよな。
前世に因縁なんてなかったはずだが。
「なんか、珍しいものってない?」
俺が尋ねると、
「うーん、そうだな。これなんかどうだい?
指輪なんだけどな、おそらく魔道具のはずなんだが使い方がわからないんだ。」
「使い方がわからないって作ったんじゃないの?」
「これは、遺跡から発掘されたものでな、稀に流れてくるんだ。」
へぇー、やはり、トレジャーハンターすべきか。でも場所がわからないからな。
あとでパールにでも聞くか。
「いくらなの?」
「お前さんじゃ、手が出せねえよ。金貨20枚だ。」
買えるが、いい値段だ。
値切ってみるか。
「ええ、効果わかってないのに高すぎだよ。金貨12枚でどう?」
「おお、そんなに払えるのか。正直売れそうにないから売ってもいいが、うーん、もう一声。」
「じゃあ、金貨14枚。」
「よし、交渉成立だ。」
よっしゃー、金貨6枚も値切ったぞ。
「すごいね、ジン。僕じゃできないよ。」
おいおい、当主となったら商人と話すこともあるだろ。
絶対奴らはふっかけてくるから交渉は必須だぞ。大丈夫か、マルス。
マルスの将来が心配になるが、自分のことではないのであまり考えない。
「では、そろそろお昼ご飯でも食べに行きますか。」
「うん、もうお腹ペコペコだよ。」
「僕もだよ、かなり歩いたしね。」
俺たちはそんな会話を交わしながらご飯を食べるところを探して歩くのだった。
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