第81話 交流

「コンコン」

「失礼します。ジン様。起きてください、朝食の時間です。」

「…うん、あと少しだけ寝かせて。」

「もうそんな時間はありません。準備もいろいろありますから。」

そういうと、布団をめくってくる。

「寒い~。」

「ほら着替えてください。」

しぶしぶ着替えて朝食の場へ向かう。

「おはよう、ジン。」

「おはようございます。」

「おはよう。」

「ジン、ミリアから聞いたわよ。」

まさかあの事じゃないだろうな。

「昨日、アスベル家のマリーナ嬢と一緒に帝都を見て回ったらしいじゃない。」

「はい、そうですね。」

出来ればこの事も黙ってもらいたかったけど、どうせバレたか。

はぁ~、パーティ、ほんとに嫌だな。

「ジンも隅には置けないわね。」

「本当だよね、その調子で頑張るんだよ。」

「そうね、頑張りなさい、応援しているわ。」

適当に相槌を打ちながらやり過ごす。

(心配されてますね、マスター。)

(そういうことにしておこう。この会話ってアレクとアレナは気づいてないよな?)

(おそらくそうでしょう。二人の性格上、気づいたら指摘しそうですから。)

(そうだよな。なぁ、ミリアクラスにもバレないようにしてほしいんだが。)

(ジェドに気づかれたときから改良しているのですが、もともとが良くできているので改良するのが難しいのです。)

(そこを何とかしてこその世界最高の人工知能だろ。)

(まぁ、学園までには完成させてみますよ。)

(あぁ、よろしく頼むよ。)

(それにしてももうパーティですか。本格的に入学までカウントダウンしましょうか?)

(いらん!!)

(年が明ければすぐに学校ですからね。)

(なぁ、たしかテストってないんだよな?)

(そうですね、入学してから能力を測るそうです。)

(よく考えられてるよなぁ。)

(それはそうですね。もしテストで不合格があるならば、わざと落ちて家で学ぶ人もいるかもしれませんからね。)

(帝国にとってそれは避けたいだろうな。自分の家を最優先にする価値観を植え付けられたら権力闘争がさらに激しくなるからな。)

(確かにそうですね。)

朝食を食べ終わり、馬車に乗って帝城へ向かう。

ああ、気分は最悪だな。下手したら首がなくなるかもしれないという怖さは常にある。

へまをやらかしたら申し訳ないが、全力で逃げることになる、家族を残して。

城に着き、軽く身体検査を受けて入っていく。

(マスター、表情が硬いですよ。笑って笑って、写真をとりますから。)

このポンコツ機械、絶対許さん。

(お前、帰ったら覚えとけよ。ぶっ壊れるまでこき使ってやる!!)

パールに苛立ちながらパーティ会場へと入っていく。

しばらくは他の貴族たちのもとへ挨拶回りをしていく。

挨拶回りが終わった時点で公式の場は終わり。

これは暗黙の了解だ、とくに子供が主役の場合は。

挨拶回りが終わって休憩していると、

「ミランダ皇女殿下のご登場です。」

というアナウンスが流れた。

そうか、そういや、こいつもいたんだったな。

関わりたくない奴、ナンバーワンだ。

そこからはパーティ会場が前後で分けられ、前は子供たち、後ろは大人たちで別れていく。

あぁ、そういうシステムなのね。なんて合理的なんでしょう。

このシステムを考えたやつは絶対性格が腐ってる。

「ほらジン、頑張って。」

「行っといで。」

物理的に、アレナに背中を押され、子供に交じってしまう。

くっそ、まずは陰キャっぽいのを探そ。

んんー、見た感じいなさそうだな。

さすが貴族の子供、キラキラしてる。

周りを眺めていたら一人の男が歩いてきた。

「よう、俺の名前はケルン・フォン・レーベックだ。よろしく。」

陽キャっぽいの来たー-。

無茶苦茶ガタイいいな。将来は狂戦士だな。

俺が太鼓判を押してやるよ。

「俺の名前はジン・フォン・エルバドスだ。こちらこそよろしく。」

(パール、レーベック家の階級は何だ。)

(子爵家です。)

許容範囲だな、俺の勝ちだぁ。

ただ、少し陽キャっぽいのが気になる。

こいつが何をしようと勝手だが、巻き込まれるのはごめんだからな。

そんなことを思っていると、もう一人、白よりの金色をした長髪の男が話しかけてきた。

こいつ、イケメンすぎんだろ。異世界レベルが高すぎる。

「やぁ、僕も会話に入れてくれないかい、僕の名前はロハド・フォン・マーベル。君たちの名前を聞いても?」

「ケルン・フォン・レーベックだ。」

「俺の名前はジン・フォン・エルバドスだ。」

(マーベル家の階級はなんだ?)

(公爵家ですね、高い方です。)

はあ?、なんで、そんなやつが絡んでくるんだよ。上は上で絡んでろよ。

「なるほど、ケルンにジンか、改めてよろしく。同じクラスになれたらいいねぇ。」

「そうだな。」

「クラス分けは適当かな?」

なりたくねぇわ、馬鹿野郎。

「基本的には適当だろうけど、特別な配慮もあるかもね。」

なるほどな、完全な独立状態ではないと。

それもそうだろうな、組織を動かしてるのは結局人だからな。

まぁ、欠けたところで変わりはいっぱいいるんだが。

その後もいろいろ会話していると、

「久しぶり、ジン。」

そう呼ぶ声が聞こえてきた。





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