第46話 死闘
「ぶちぶち」
全身からしてはいけない音がするなぁ、どうしてこんなことになってんだろ。俺はただのんびり暮らせたらよかっただけなのに、いつの間にか過去の逸話に巻き込まれてんなぁ。
俺は若干現実逃避しつつ、全身の痛みを無視する。
「螺旋水槍50連。」
先ほどよりも威力が上がり、扱える魔法の幅も増えた。
「ギュラーー---」
俺の魔法と奴のブレスがぶつかると俺の魔法に軍配が上がった。
そしてすさまじい衝撃波が生じるが、俺は気にせず突っ込む。
「黒剣」
次々と作ってあいつに飛ばす。
[小賢しい。]
そういって、風魔法で粉々にする。
あの風魔法に触れたらやばいな。簡単に腕の一本くらい飛ぶぞ。
俺は龍の使う魔法に改めて畏怖の念を覚える。
「螺旋重蒼炎」
初めて俺はこの魔法を使ったが成功する。
「ガァァァァー-、グギャァァー----」
よし、押し込んだ。今度はお前が堕ちる番だ。
「重力倍加、風拳」
俺は今までのお礼もこめて、思いっきり氷剣で傷つけた場所を殴る。
「グウゥゥゥー--。」
「ドーーーーーン」
おお、堕ちた。ざまあみろ。
「とどめだ、黒剣。」
俺は刃が長い黒剣を作り出して奴の背中に乗り、思いっきり首にめがけて振り下ろす。
「グラァァァァァー-」
振り落とされないように気を付けながら、全魔力を振り絞って黒剣に力を込めるが奴も身体強化し、鱗がめちゃくちゃ固くなっている。
くそったれ、さっさとくたばりやがれ。もうマジで魔力が残ってねぇんだよ。
[その程度じゃ、我の首を切り落とすことはできんぞ。それにおぬしはもう魔力がほとんど残ってないんだろ。魔力がなくなったところで殺してやるわ。そして大陸の覇権を手に入れてやる。]
そう言って、奴は身体強化の倍率をさらに上げていく。
なんて陰険な奴だ。これまでの人生でもここまで陰険な奴に出会ったことはねぇぞ。
さすが人外だな。
「マスターー--、倒してください、これからも一緒にいたずらして回りましょうよ。やっと、私を外に連れだす人が現れたんですから責任を取ってください。」
「…、人工知能に言われても嬉しくねぇよ。」
そう答えつつも、ジンの胸に温かいものが宿る。この世界に来てからは得たことがなかったもの。
「ほかの奴らがどうなるかなんて知ったことか、俺のために死ねー-。」
そう叫んだ瞬間、身体の魔力が銀色に輝き始める。
「おっらぁー----。」
ストン、これまでの苦労が嘘のようにあっさりと龍の首が堕ちる。
龍の死に顔は信じられないもの見たかのような表情をしている。
「はは、勝ったぞ。」
気が緩んだ瞬間、全身の痛みがひどくなり、体のあちこちから血が吹き出る。
「マスターーー」
やべぇ、この出血量は死んだだろ。
だんだんと視界が暗くなり倒れてしまった。
「う、…知らない天井だ。天井?ここはどこだ?」
「よかった、マスター、目を覚ましたんですね。急に血を噴き出して倒れたので驚いたんですからね。」
質問にちゃんと答えろよ。このポンコツ。
「そうか、で、ここはどこだ。」
「避難船の医療室です。治療自体はすぐに終わったのですか、なかなか目を覚まさなかったので少し心配しました。」
「それは悪かったな。でも何とか生きてたか、もうあんな思いはごめんだな。」
「全くです。あと、水龍の遺体は前の古竜の素材と同じ部屋に置いてあります。まだ肉の処理はしてませんが。」
「ご苦労、とりあえず帰るぞ。まだ時間は大丈夫だよな?」
「はい、ギリギリですが間に合います。マスターが万全ならば。」
確かにもう魔力がほとんどない。
「やばいな、どうすればいいかな?」
「この避難船で帰りましょう。姿は隠せますし、それなりに速いですから。」
「わかった、さっそく帰ってくれ。」
「了解。」
なかなかに快適な飛行を窓の景色を見ながら楽しむ。
「よし、この辺でいいぞ。魔力も少し、回復したからな。」
「わかりました。」
そう言って俺は家に帰り、晩御飯を食べてすぐに寝たのだった。
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