第86話 疲れる話

間違いのご指摘ありがとうございます。

また、「処刑人の一族」という小説も書きはじめてみました。

良かったら読んでみてください。

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「結構、お店やってるね~、どこにしようか?」

「私、こういうのわからないから、あなたたちに任せるわ。」

思考停止か?、赤毛?

駄目だ、どうしてもこいつ、俺に対するあたりが強いから喧嘩腰になっちまう。

下手したら詰むってのに。

「俺はがっつり何か食いてぇな。肉とかいいな。」

「僕は何でもいいよ。どこのお店も美味しいだろうし。」

お前もか、ロハド。

何でもいいはやめとけ、あるかは知らないが、野菜ばかりのお店だったらどうすんだ。さすがに嫌だろ。

この世界の野菜が新鮮で、地球の物より美味しいといっても野菜は野菜。

好んで食べたいとは思わない。

「普段は食べられない料理を食べてみたいわね。」

「確かに、それはそうかも。帝都を歩ける機会ってあんまりないから。」

ええ~、安定の美味しいものがいいな。

そういう冒険は極力控えるタイプだから。

でもここは合わせるしかない、大多数の意見に流される元日本人としてのサガだな。

「そうだな、でもケルンの言う通り、がっつりも食いたいな。」

それぞれの意見を出しつつ、お店を吟味していく。

「あそこはどうだ?、牛鍋って書いてあるぞ。」

ぎゅ、牛鍋だと。まさか、すき焼きか!!

「あそこにしよう、あそこがいい。」

「どうしたのよ、あんた。急に熱心になって。」

「そんなにいきたいの~?、マリーは別にいいけど?」

「僕も構わないよ。」

「私も。」

「いいわね。牛鍋は食べたことがないから。」

満場一致で決定した。

すき焼きか久しくたべてねぇな。

もしほんとにすき焼きなら、全力で盗まねぇと。

お店に入り、座席は子供たちだけで固まり、大人は大人で座る。

メニューを確認すると、

俺の勝ちだ!!、これはすき焼き以外になんと表現すればいい?

最高だ、この店は新しくできたのかな?

前に来たときはなかったぞ?

まぁ、なんでもいいや。今はすき焼きだ。

「じゃあ、この小牛鍋、七個でいいかな?」

「いや、俺は二個食うからよ、八個で頼むわ。」

「私も二個たべたいから、九個で頼むわ。」

さすが成長期、でもさすがに二個は無理かもしれない。

結構、ボリュームあるからな。

「よく、そんなに食べられるね。私は全部も無理かもしれない。」

「セラ、あなた、よく食べないと大きくなれないわよ。」

「それは分かってるんだけど、うう。」

ロゼ、お前は食いすぎじゃないのか?

「じゃあ、店員さんを呼ぶよ、いいね。」

「ええ。」

「すいませーん。」

「はい、ご注文をお伺いします。」

へ~、尋ねるフレーズは同じなんだな。

マニュアルで決まってんだろうなぁ。

「この小牛鍋九個でおねがいします。」

「はい、小牛鍋九個ですね。しばらくお待ちください。」

それにしても、平民の服装をしているとはいえ、無茶苦茶なじんでるな。

俺ならまだしも、上級貴族や皇族っていうのがな。

そういう教育を受けてんのかな?

「すごいわね、ロハド、そんなにすらすら注文できるなんて慣れてるのかしら?」

「そうですね、父親がお忍びで出かけるのでよく付き合わされるんですよ。」

「そうなのね。それに、ロハド、敬語はいいわ。もう友達でしょ。」

「そっか、分かったよ。」

両親と話すよりは楽しい会話をしていると、小牛鍋が運ばれてきた。

「美味しそうね、食べたことないから楽しみだわ。」

「俺も初めてだぜ、いい匂いするなぁ。」

「じゃー、食べようか~。」

「「「「「「「いただきます」」」」」」」

皆黙って、一心不乱に食べる。もちろん俺もだ。

うまい、美味すぎるぅ。あのハンバーグといい勝負だ。

これは二個でもいけたな。後で頼もうかな。

(マスター、食事をお楽しみ中、申し訳ありませんが速報です。)

(なんだ、今いいとこなのに。)

(ユーミリア公国は覚えていますか?)

(スノボーをしたところだろ。あと鉱山があるんだっけ?)

(はい、そこに対して、フォーミリア王国とエナメル王国が手を結んで侵攻の用意を始めました。おそらく春になったら侵攻するつもりでしょう。)

(おい、たしかエナメル王国ってトランテ王国と同盟を結んでいなかったか?)

(はい、結んでいます。)

(…フォーミリアは帝国と敵対するということか?)

(それはまだ分かりませんが、同盟を組むのは厳しくなったと言わざるを得ません。)

なんてことだ、本当に大陸全土で戦争が起きるのかもしれない。

そうなったら、この大陸に安寧の地がなくなるかもしれない。

かといって、ほかの大陸もどうなんだろうな?

ここよりもひどいかもしれないし、まあ差し迫ってから考えればいいか。

(それと東部諸国連合はご存じですか?)

(ああ、知ってるぞ。小国が集まって相互に同盟を結んでるやつだろ。)

(おっしゃる通りです。そこに対して、あの海のリゾート地があったマルシア王国が圧力をかけて物資を提供させてます。主に、軍備増強のための品ですね。)

なんか、一気に食欲がなくなってきた。

(なぁ、本格的に不味くないか?)

(不味いですね。介入されますか?)

(そこまで働きものじゃないさ、俺は。いざとなったら逃げるだけだ。ちゃんと避難船の点検もしといてくれよ。)

(はぁ~、了解。)

そしてそれぞれ、デザートも注文し、結構話してから店の外に出る。

「美味しかったわね、また今度来ようかしら。」

「その時は私も誘ってね、ロゼ。」

「ええ、いいわよ。」

「腹も膨れたからな、今度はどこへ行くんだ?」

もう帰ろうぜ、俺は疲れたよ、いろいろな情報がありすぎて。

そうだ!!、

(パール、フォーミリア王国とエナメル王国が手を結んで侵攻の用意をしているという噂を流せるか?)

(可能ですよ、人間のホログラムと音声を組み合せばいいだけですから。)

(じゃあ、ユーミリア公国で噂を流してくれ。)

(お茶の子さいさいです。すぐに極小型探査機で流します。酒場でいいんですよね?)

(ああ。)

「ジンはそれでいい?」

き、聞いてなかった。でもどうせオーケーていうしかないんだろ。

「ああ、いいぞ。」

「では、お城へ行きましょう。」

んん!?、なんでそうなった。

粗相をしたら冗談抜きで首が飛ぶな。気を付けねば。

(本当にご愁傷さまです。)

(全くだ。)

一行はお城へと向かうのだった。


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