第85話 街ブラ
上演が終わった。
なかなかリアルな黒竜だったな。
何の素材で作ってんだろ?
「悲しいお話ね。結局最後は結ばれないなんて。」
「そうだね。この前もリュウの襲撃があったからねぇ、愛する人を亡くした人は多いと思うよ。」
ロハドがそれを言ったら気まずさが半端ないな。なんて言えばいいか分からん。
げぇー、ケルンの奴泣いてやがる。
「うう、悲しすぎんだろ。せめて結ばれてくれよぉー。」
ええ、そこまでいく?、引くわー。
(マスターも泣いたらどうですか?)
(無理だな、愛する人とかよくわかんねぇじ。)
(そうですか。では、学園で気になる人を見つけましょう。そしてアプローチするのです。)
(とうとう壊れたか?、貴族はごめんだって言ってるだろ。)
(でもマスターも貴族ですよね。なら結婚相手は貴族なんじゃないですか?)
(違う、結婚するなら平民だ。これは絶対だ。)
(でもマスターは平民と話す機会がないじゃないですか。)
(学園を卒業すれば話す機会はあるだろうさ。成人したらどこかに行かないといけないからな。)
(それまで待つんですか?)
(ああ、急いては事を仕損じるからな。)
(残念です。マスターの面白い映像が取れると思ったのですが。)
(残念でしたwwww。)
「ブチッ」
「ねぇ、今何かが切れる音しなかったかしら?」
「確かにしたような気がする。」
ミラとロハドの耳に留まってしまった。
「そうか?、俺はしなかったぞ。」
(パール、ちゃんと音消せや。)
(少し、不具合が生じたみたいです。)
パールと会話しながら建物の外へ出る。
「それで次はどこへ行くんだ?」
「うーん、みんなどっか行きたいとこある?」
ねぇよ。もう解散でいいだろ。
「武器屋に行きたいわね。剣を新調したいから。」
まさか、あそこじゃないだろうな。
「そっかー、なら武器屋に行こうか、マリー、場所知ってるから。」
そう言ってマリーを先頭に進んでいく。
俺がロハドに尋ねる。
「そういやロハドって、長男なのか?」
「そうだよ。下に妹が二人いるんだけどね。」
「へ~、そうなんだ。俺には上の兄弟しかいないから、将来何をするか考えないといけないんだよな。」
「俺も同じだな。俺には兄貴がいるからな。将来何をするか決めとかねぇとな。」
「ケルンは騎士じゃないのか?」
「騎士もいいけどな、冒険者とかも憧れるな。」
「あぁ~、確かに。」
いつ働くか自分で決めれるもんな、誰にも指図されないというのがいい。
「でも、高位冒険者になったら戦争に参加できないんじゃなかったっけ?」
「ああ、そうだったか?、ならなしだな。やっぱり騎士か~。」
騎士というか戦士っぽいけどな。
結構長く歩き、足がつかれ始めた頃、
「おっ、ここだよ。」
とマリーが告げる。
到着した武器屋は前のところと異なり、とても綺麗だった。
どうしてマリーはこっちを案内したんだろうな。
ああ、あの爺さんの試し斬りがあるからか。
一人納得しているとロゼがどんどん中に入っていった。
「あっ、ちょっと待ってよ、ロゼ。」
続けてセラが入っていく。
「おお、武器か、俺も見に行きてぇ。」
「僕も見てみたいな。剣以外の武器は置いてあるかな?」
そして俺、マリー、ミラ、そしてそれぞれの護衛だけが残った。
「マリー、どうしてあそこに行かなかったんだ?」
「わかんないかぁ、内緒。」
どうせそんな大した秘密じゃないだろ。
さっさと言えばいいのに。あとになればなるほど言いにくくなるのは経験済みだ、特にどうでもいいことなら。
「あそこって、どこの事かしら?」
「ほかにも武器屋があるんだ。ボロボロなんだけどな。」
「そこで、マリーと出会ったということかしら?」
「いや、その前の魔道具店だな。」
「そうそう、まさかマリー以外にもお忍びでいるなんて思わなかったから、びっくりしちゃった。」
「そうなのね、あとで魔道具店にも行ってみたいわね。」
ええー、もう一昨日行ったばかりだし、行きたくねぇ。
そもそも帝都自体が見て回るとこ少ないよな。
「じゃあ、俺たちも中に入るか。」
中に入るとロゼが剣を振っており、なかなかの剣速だった。
店内で振っていいんですか?
危ない奴だな。
「すごいね。ロゼ。私、そんなに速く剣を振れないよ。」
お前もまた暢気だな、セラ。
「そう?、慣れれば意外と簡単よ。」
そして今度はケルンたちの方に目をやると、
「「ふっ、ふっ」」
槍を扱っていた。
「う~ん、結構難しいね。やっぱり、ちゃんと練習しないと駄目かな。」
「そうだな、やはり剣と間合いが違う。」
その後もいろいろ試しているのを眺める。
「ジンは試さなくていいの?」
「まぁ、俺は新しい武器があるからな。別に買う必要がない。」
でも槍の練習もしてみようかな。剣より間合いが広そうだから相手が大人数のときに役立ちそうだし。
「それって、前に言ってた武器屋で買ったの?」
「いや、もらったんだ。」
「えっ、どうして?」
「いろいろあったんだよねー、ねっ、ジン。」
「まぁ、その一言に集約されるな。」
「具体的に教えて。」
「お買い上げありがとうございましたー-。」
ナイスタイミング。買い物が終わったようだな。
「また今度、時間があればな。」
「絶対よ。」
「わかってるよ。」
そして店の外に出る。
「それで、何か武器買ったの?」
「私はこれ。」
そういって、ロゼが鞘から剣を取り出す。
おお、綺麗だな。これってやっぱり一つ一つ作られてんのかな?
「俺はこれだ。」
ケルンは大剣を見せる。
「今はまだ扱えないが、いつか扱えるようになってみせる。」
お前なら大丈夫だ、バーサーカーよ。
俺が保証する。
「ロハドはなんだ?」
「僕は包丁を買ったよ。自分で料理をするからね、新しいのに変えようと思って。」
「へ~、すごいね。まぁ、マリーもできるけど。」
「えっ、マリーできるのか。」
「ひっど。ジン、私だって料理ぐらいしまーすー。」
「そいつは悪かった。じゃあ、こんど作ってくれよ。」
「しょーがないなぁー。作ってあげる。」
…今更だけど大丈夫だよな。黒こげの料理が出てきたら全部は食えんぞ。
いざとなればこっそりパールに処理してもらうしかないな。
「ねぇ、そろそろ、昼食にしない?」
「それはいいわね、お腹もすいてきたし。」
「そうだな、それがいい。」
「じゃあ、歩いて店を探そうか。」
通りを歩いて昼食を食べる店を探す。
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