第50話 発芽
朝から昼、昼から夜まで酒場で毎回違う姿に扮しながら同じ噂を流す。
そしてたまに、龍の肉を食べる。
そんな生活を3日ほどすると、噂は一気に広がり、民からは真相を求める声が上がり始め、冒険者ギルドと国は対応せざるを得なくなった。
冒険者ギルドと国は否定しているが否定すればするほど民は疑念を抱いていってる。
政治家と同じだな、たいていは真っ黒だ。
今日は冒険者ギルドに向かう。
(かわいそうに、今頃、冒険者ギルトと国の上層部はてんやわんやだろうな。同情するよ。)
(原因はマスターなんですけどね。他人事みたいな感じはやめてください。)
(実際、他人事だしな。税金で暮らしてんだから給料分は働かないとな。)
(マスターも税金で暮らしてるんですけどね。)
(確かに。すっかり忘れてた。)
(はあ、領民も報われませんね。)
(嫌なら、謀反でも起こしてみろってぇの。全領民が蜂起したらさすがに領主も譲歩せざるを得ないぞ。かなりの被害は出るが。)
(そこまでの気概を全領民は持てないでしょうね。)
(わかってるじゃないか、命が惜しいからな。それでリュウがいる場所は判明したんだろうな。)
(はい、昨日の夜中に発見しました。場所は大陸の端にある大森林ですね。)
(大森林か、異常なところなんだろ?)
(そうですね、方向感覚が狂う上に強力な魔物が跋扈し、一度入ったら出られないといわれています。ですから龍はそこに隠したんでしょうね。)
(まあ、いざとなれば森に火を放てばいいだけだが。)
(発想が人でなしですね。)
(負ければ明日がないからな、勝てるなら何でもやるさ。道から外れた行為ができるから、今は人間が大陸の覇権を握ってるんだろうさ。)
森がなくなっても、また植林すればいいだけだしな。
何年かかるかはわからないが。
(確かにそうかもしれませんね、それで行かないんですか?、ずっとさっきから宙に浮いたままですよ。)
(…厄介事があるって分かってるところにすんなり行けるほど酔狂じゃないんだ。)
(それでもどっちみち行かないといけないんですから早く行きましょうよ。)
(はあ、わあったよ。)
隣の領の冒険者ギルドへ転移する。
思えば、ここにもよく来たもんだ。
はぁ、今からでも帰ってだらだらしたい。
受付嬢に
「ギルドマスターはいるか?」
と聞く前に
「ああ、やっときましたね。銀仮面さん。ギルドマスターがずっと待ってたんですよ。」
と言われて奥のギルドマスター室に連れていかれる。
分かってた事とはいえ、なかなかのストレスだな。
「コンコン」
「ギルドマスター、銀仮面さんを連れてきました。」
「そうか!!、早く通してくれ。」
「失礼する。」
そう言って入ると室内には二人だけとなった。
「全く、もう少し頻繁に来てほしかったな。話し合いたいことがたくさんあるからな。」
だから、行かなかったんだ。それぐらい分かれ。
「すまないな、こちらにも都合というものがある。」
「それで聖剣の場所はわかったのか?」
明らかに分かったはずがないという顔をしている。
本当にむかつくゴリラだ。
「ああ、分かったぞ。」
「なんだと!!、どこにあるんだ。」
「それはまだ言えないな。冒険者ギルドが本格的にリュウと争う覚悟があるのかどうかがわからないとな。」
「ぬぅ。本部に伝えたところ、反応はよくない。所詮御伽噺だと思っているらしい。だが、最近どこからかリュウが人と敵対し、小国が滅ぼされたという噂が流れ始めてな。民から真相を求める声が上がり始めるし、いろんな国からも聞かれる始末だ。否定してもますます火に油が注がれる感じで収まる気配がない。」
そうだろ、そうだろ。そうじゃないと俺の努力が報われない。
「それでは冒険者ギルドは動く気はないんだな?」
「ないが、一応SS級冒険者たちを真偽を確かめに行くという名目で大陸の西側へ向かわせている。」
「民と国を落ち着かせるためか?」
「そういうことになる。」
「そうか、聞けたいことは聞けたからな。俺も大陸の西側へ向かう。」
そういって、おれは部屋を出ていく。
「まて、まだ聖剣の場所は聞いてないぞ。」
誰が言うか、口の軽い奴に。
俺は無視して大陸の西側へ向かうのだった。
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