第103話 開幕
いくつかの列に分かれて並んでいるため、俺たちも列の最後尾に並ぶ。列が進むと門の前の衛兵が話しかけてくる。
「お名前をお伺いしてもよろしいですか?、それと招待状をお持ちですか?」
「私の名前はラウド。あと、招待状はこれでいいかな。」
「はっ、では招待状に魔力を流していただけますか?」
俺が魔力を手紙に流すのか?、なんでだ?
疑問に思うが魔力を流すしかない。すると、手紙に書かれた文字が白く光った。
なるほど、光らなかったら偽造ってことか。ミリアのやつは大丈夫なのか?
「これでいいかい?」
「はっ、ありがとうございます。どうぞお入りください。」
衛兵は参加者リストらしきものにチェックを入れていた。
(パール、偽造したやつは大丈夫なんだろうな?)
(もちろんです。ありとあらゆる解析をしましたから完璧です。)
それならいいんだが。
(それにしても随分チェックが緩いような気がするな。)
(あの招待状の文字は本人の魔力じゃないと光りませんからね。)
(は?、じゃあなんで俺はいけたんだ?)
(偽造を作るときに判明したので、改造したんですよ。)
(じゃあ、もし改造してなかったら…)
(一発でバレてましたね。)
あっぶねぇ。初日からやらかすのはないわ。マジで助かった。
(サンキュー。マジで助かった。)
(私はマスターをサポートしますからね。どーんと構えていてください。)
こいつ、ポンコツだったのに、成長したんだな。子供の成長を見守る大人の気持ちがわかった気がする。
返された招待状を受け取って、屋敷の中へと入っていく。他の人たちが仮面をつけ始めているので俺もつける。
(なんかワクワクしてくるな。いけないことしてるみたいで。)
(普通にいけないことなんですけどね。)
(うっせー。)
後ろを見てみると、ミリアが付いてきていた。
「サナ、久しぶりだな。どうだ、一緒に回らないか?」
「ええ、喜んで。ラウド。」
ミリアが敬語使わないと頭が違うとはいえ違和感がすごいな。気持ち悪っ。
ミリアも仮面をかぶり、周りの人についていく。しばらく、進むと地下への階段があった。前の人に付いていくと、そこには大きなステージとたくさんのいすが置かれており、部屋は薄暗くて怪しそうな雰囲気だった。
(結構、薄暗いな。)
(そうですね。プライバシーに配慮しているのでは?、バレたら不味い人も出席しているでしょうし。)
(用心なこった、仮面までしてるっていうのにな。それにかなり警備員の数も多いな。)
(貴重な品も出されるからでしょうね。)
(確かにそうだな。)
あの宝石は出品されないだろうなぁ、たぶん。可能性があるとしたらどっかの国の宝物庫かもな。
「じゃあ、あそこに座ろうか。」
「ええ。」
小声でミリアが話しかけてくる。
「何か出品されたものを買うの?」
「勿論さ。金ならたくさん持ってるからね。買い漁るつもりだ。どんな品が出るか楽しみだよ。」
「そうなの…。」
その後も話していると、ステージ上が明るくなった。
「みなさん、長らくお待たせいたしました。それでは開幕とさせていただきます。まずは今回の目玉商品を紹介させていただきたいと思います。こちら伝説の鳳凰の羽でございます。」
そういうと虹色の羽が紹介される。それを見た観客はざわめき、ミリアの息をのむ音が聞こえてきた。
(パール、そんなに珍しいのか?)
(それはもちろんです。鳳凰は大陸を超えて移動しているとされています。その生息数は少なく、目撃証言もあまりありません。しかも鳳凰はたまに羽を落とします。その羽を持つと幸運に満ちた人生を送ることができ、一説には潜在能力も解放されるとか。)
(なんだそれ、めちゃくちゃほしくなってきた。絶対競り落とすぞ。)
「こちらは最終日にオークションにかけられます。ぜひご参加ください。」
はーい、分かりました。絶対参加します。
「とんでもないわね、このレベルの品も出品されるというの?」
これはミリアの素かな?、慣れてきたら普通に感じるな。
「どうだい?、来てよかっただろ。あれは絶対僕が競り落として見せる。」
「そんなにお金を持ってるの?」
「ああ。でなければ出席なんてしないさ。あれだけの品を前に見るだけというのは拷問だからね。」
(マスター、気持ち悪い話し方ですね。私には肌はないですが、鳥肌が立ちそうです。)
(どうやら俺には役者としての才能があったらしいな。)
(どちらかというと詐欺師か、占い師ですね。)
(まぁ、そういうのは紙一重だからな。あとはもう個人差だし、仕方ない。)
(マスターに屁理屈を語らせたら天下一品ですね。)
(知ってるか?、屁理屈も理屈なんだぞ。)
(そういうところですよ。)
そんな会話をしていると、ついにオークションが始まった。
「それではまずは一番最初の品はこちら。エルフの少女です。さあ、白金貨5枚から始めさせていただきます。もちろん、このエルフは手付かずです。では始めます。」
マジでいきなり白金貨5枚から始まるってえぐいな。庶民は滅多に見ることがないものなんだぞ?、ヴァルクス商会を襲撃してよかったな。
「白金貨10枚」
「こっちは30枚」
「100枚だ。」
「おお」
どよめきが起きる。
声のした方を見るとヒキガエルみたいなおっさんが立ち上がっていた。
うっわ、あんなんに買われたら人生終わりだな。もう同情するしかねぇな、俺は買うつもりなんてないし。
「100枚が出ました。だれか、他にはいませんか?」
「……………」
お互いに値を吊り上げないか観察しあう。
「では落札です。おめでとうございます。最後にお金と商品のやり取りをしますのでお待ちください。では次に参りたいと思います。お次はこちら、世界最大の宝石サファイアです。これほどの大きさは類を見ないほどです。白金貨1枚から始めさせていただきたいと思います。」
「5枚だ。」
「7枚だ。」
「こっちは30枚だ。」
俺がそういうと一気に視線が向けられる。
「37枚。」
「43枚。」
ちっ、食らいついてくんなよ。
「70枚だ。」
「70枚、70枚です。他にはいらっしゃいませんか?」
「……………」
「落札、落札です。おめでとうございます。」
よっしゃー!、初めての体験ができた、めっちゃ面白いな。
その後も闇オークションは続いていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます