第60話 黒リュウ

「あそこは帝国じゃないか!」

「ああ。それにあれは闇魔法だな、それも大規模だ。おそらく黒リュウだ。どっちかはわからんが。」

くっそ、なるほど、こっちは全て陽動か。

よくよく考えれば帝国が標的なら一目散に向かえばいいだけだからな。

大胆だな、まんまと嵌められたってわけだ。

「悪いが先に行くぞ。」

「はっ?」

俺は連続転移で向かう。

くっそ、帝国を滅ぼすわけにはいかん。

俺の生活のために。

一気に向かうと黒龍が暴れまわっていた。

「銀氷剣30連」

俺の放った魔法は奴が纏う闇魔法によって阻まれた。

「はっ?、闇魔法で防御できるもんなのか?」

[人間、やるではないか。SS級冒険者か?]

「…違う。俺はただのD級冒険者だ。」

よし、こいつと喋ってジェドが来る時間を稼ぐぞ。

「お前らが怒ってるのは約定を当時の皇帝が破ったからだろ。でもその皇帝は約定を守ろうとしてたんじゃないか、なら帝国を攻める理由にはならないんじゃないか?」

[ほぅ、人間にしては覚えてるようだな。だが、皇帝が子孫に実現させると誓ったことは知らないようだな。]

なるほどな、だから帝国にこだわるわけだ。賢王の子孫がいるわけだからな。

「誓っただけだろ、約束したわけではないじゃないか。」

[我らからすれば同じこと。だが目覚めてみると、約定は守られていないではないか。ならその代償を受けるのは当然だ。]

「そのために西側を陽動として攻めさせたのか?」

[そうだ、聡いな。それにしてもその仮面、我でもおぬしの正体がわからないとはすさまじい代物だな。]

「そいつはどうも。でも完全に力は戻ってないんだろ。どうして戻るまで待たなかったんだ?」

[待てなかったのだ。目覚たとはいえ、力が完全に戻るにはあと数十年はかかる。その間に人間に目をつけられればSS級冒険者が討伐しに来る。さすがにそうなれば全滅は必至、力が戻ってないからな。なれば、その前に動くのは必然だ。]

「なるほどな。」

[どうだ、もう質問はないだろう。時間稼ぎはここまでだ。]

「!!、分かってたのにどうして話したんだ?」

[一人くらい真実を知ってほしかったのと、これから死ぬ貴様への冥途の土産だ。]

「やっべ!!」

ギリギリで黒剣を躱す。

「パール、仮面とあれを頼む。」

俺はそういいながら転移でジェドの方向に向かう。

[逃がさんぞ、人間。]

そういうと奴は闇で俺たちの周囲を取り囲んだ。

まじで、龍って陰険だな。最悪の生物種だ。

[これで我を倒すしか道はなくなったぞ。ほう、お主は子供か、それにその剣は聖剣か。ということはあやつらを倒したわけだ。D級冒険者と言っておったが嘘であろう。油断も隙もない奴だ。]

「俺を倒したところでSS級冒険者がお前を倒すぞ。」

[そんなことはとうの昔から知っておるわ。どうせあの時、スライムが現れなかったとしても我々は放逐されていただろう。なれば一か八かにかけるのも悪くはない!!]

悪いわ、馬鹿野郎。せめて俺が死んでからにしてくれや。

殺すんではなくてさぁ。

「まぁいい、人類の発展の礎になってくれ。」

そういって、俺は聖剣を構える。



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