第52話 到着
「マスター、そろそろ大陸の西側ですよ。」
「そうか分かった。じゃあ、外に出るぞ。それにしても、全然できなかったな。」
ずっと魔力の質を変えようとしていたが、全く変化はなかった。
おそらくアプローチの方法が間違ってるんだろうな、何とかリュウと戦う前に会得しておきたい。
あれがあるのとないのでは天地ほどの差があるからな。
避難船をペンダントに戻し、あたりを見渡す。
「ここはどこだ?」
「テレスティン王国です。マーテル公国の隣国の隣国ですね。」
「へー、なんか習ったような気もするがよく覚えてないな。」
「まあ、大した国力を持っていない小国ですから。」
おおぅ、辛辣ー。
さすがに俺でももう少しオブラートに包むぞ。…包まないか。
「よし、どうしようか。」
「…まさか、何も考えてなかったんですか?、夜ご飯の時間を気にしてたのでやっと計画性が少しは芽生えたのではないかと思ってたんですが。」
「避難船で考えようと思ってたけど忘れてたんだ。」
「はぁ~、本当にしょうがない人です。」
「よし、大森林へ向かうぞ。SS級冒険者もおそらくリュウを見つけて後を追いかけるだろうからな、会えるはずだ。」
「わかりました、大森林はここからさらに南西に50キロメートルほどですね。」
「よし、案内してくれ、飛んでいくわ。」
まさに行こうとした瞬間、遠くで火の柱が空高くまで伸びでいるのが見え、遅れて衝撃波と音が伝わってきた。
「おおっ。」
吹き飛ばされないように重力魔法のコントロールをさらに緻密にする。
そして、さらに別の方向でも人為的な雷が落ちているのが見えた。
「パール、あれらはもしかしなくても魔法だよな。」
「はい、間違いありません。付け加えると、あちらはこの国の首都の方角です。」
わぁ~、空はきれいだなぁ。
軽く現実逃避してしまう。
「ええっとぉ、あれはリュウの攻撃かな?」
「おそらくそうでしょうね、聖剣がとられてないことがわかり、さらに仲間たちが集まったことで同時多発的に攻撃を加えているのでしょう。SS級冒険者よりリュウの方が多いですから。」
ご丁寧に解説どうも、大体分かってるわ。
「SS級冒険者が何人派遣されてるかは分からないが、おそらくこの国は滅びただろうなぁ。噂は本当になったわけだ。」
「暢気ですね。これからどうするんです?」
「いや~、ここまで早くリュウが攻撃を仕掛けてくるとは思わなかった。まあ仕方ないな、早く人間を滅ぼしたいだろうし。うーん、どうすっかな、とりあえず大森林に行くしかないな。」
「…そうですか。」
こいつの考えていることはわかる。
俺が大森林に行っている間にも人は死に続ける。
だが、大局からするとそこまで悪いことはない。
聖剣を手に入れれば、戦力は爆上がりだ。
そして、小国とはいえ一国が滅びれば冒険者ギルドも本気で対処するし、国々も争っている場合ではないと気づくだろう。
はぁ、俺は相変わらずこういう思考しかできねぇよな。
分かってはいるがどうしようもない。
「それで大森林の場所へ案内してくれ。」
「了解です。」
俺たちは大森林へ向かったのだった。
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