第158話 課外授業7

あけましておめでとうございます。今年もよろしくです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー「ふむ、…全員戻っているな。じゃあ帰るぞ、逸れるなよ。」

皆無事なのか、つまんね。ハァ、ということは俺達の班は運が悪かったんだな。普通S級のモンスターに遭遇しないだろ。

「今回は災難だったね〜。」

「確かにそうだな。まさかあんな魔物に遭遇するなんてな。」

「もっと修行しねぇとッ。」

「そうだ。貴族としても強くあらねば。」

意識高い系か、頑張ってほしいね。俺を巻き込まない程度に、な。

(マスター、少しは見習ったらどうですか?)

(いつもそれを言うけどさ、今回は俺じゃなくてエッグに言えよ。俺よりヤバイだろ。まあ、貴族の子供だから将来には困らないんだろうが。)

(それに関してですが、面白い予測を話しましょうか?)

(結構だ。) 

どうせろくな事じゃない。

(それはですね…)

(いいって言ってんじゃん!!)

こいつ、暴走してるって。氷魔法で冷やしたほうがいいか?

(まあ、聞いてください。面白いですから。ではいきます。…たぶんエッグも毎晩の戦闘に参加するようになるでしょう。…どうです?)

(…笑えねぇよ。いつからジョークを言うようになったんだ?)

(でもマスターもそう言われたらそんな気がしてきたんじゃないですか?)

(……)

恐ろしい未来予想図がありありと思い描ける。

嫌だ嫌だ嫌だ、俺はぐうたら生きたいんだ。やっぱり学校はクソだ。この結論は変わんねぇな。つまり真理ということだ!!

(また変なことを考えてますね?、だんだん分かってきましたよ。)

(お前のせいだからな?)

何こいつは俺に原因があるかのように言ってるんだ?

(見解の相違ですね。)

ウザっ、こいつ俺のセリフを学習しやがった。だんだん手が付けられなくなってきてるな。

「…なぁジン、ジンは小さい頃から何か特別な学習でもしてるのか?。サラさんも剣が得意のようだし。」

「私も気になるな。やっぱり特殊な修行法があるのか?」

「いや?、無いぞ。ただ父上が教えてくれたな。」

「アァ?、父親が教えてたのか?」

「ああ。」

やっぱりおかしいんだろうな。普通は家庭教師がいるだろうし。

「へ〜、ジンの父親は強いの〜?」

「うーん…、強いよ?」

よくよく考えると、結構アレクも強いんだよな。結局サラは勝ててないし、俺もはじめの頃はコテンパンにされたし。マルスに至っては勝利の勝ち目すらない。

「へ〜、なら英才教育の賜物ってことかな〜?」

「どうだろうな?」

「ジンって確か兄さんがいなかったか?」

「ああ、いるぞ。よく知ってるな。」

フレイはすべての貴族の情報を知ってるんだろうか?、ストーカー化に注意だな。

「その人も強いのか?」

「まぁ、強いよ。」

残念ながら剣の才能は皆無だけど。手を抜いて戦っていると見てるこっちが辛くなる。現実の残酷さが胸に刺さるから。

そんなことを思っているとパールが特ダネ情報をぶっこんでくる。

(マスター、マルスに関する情報があります。どうやらマルスは友達が出来てないようですね。一人でご飯を食べている姿や休日に一人で部屋に籠もっている姿をたびたび確認しています。)

…一方的な情報の押しつけはやめてほしい。しかも知りたくもない事実だし。 

(…母上が知ったら泣くなぁ。)

(ある意味アレナの懸念が現実化した形ですね。)

(まぁ、俺にはどうしようもないけどな。自分のことで手一杯だ。)

(酷い人です。血の繋がった兄だというのに。…ですよね、人間の価値観では?)

(…そうだな。)

「ならジンの家は家系的に剣の腕が優れている人が多いのかもな。」

「さあ、どうだろう。」

「んなことぁ、どうでもいい。いつか俺がテメェをぶっ倒す。それだけだ。」

「楽しみにしてるよ。」

努力が無駄に終わるのを見るのは哀しいが暗い喜びのほうが大きい。是非俺の期待を裏切ってほしい、全力で阻止させてもらうが。

…そういや、アレクの両親に会ったことがないな。こっちも仲が悪いのか?

(パール、父上の両親はどこにいるか知ってるか?)

(知らないんですか?)

(ああ。)

(ハァ…、いいですか。彼らは見聞を広めに旅に出ているんですよ。)

(初耳だ。)

俺の家族ってどこか変だよな。サラたちは知ってたのかな? 

(逆に今まで疑問に思わなかったんですか?)

(思ったけど、聞くほどのことでもないかと思ってただけだ。)

(そこまで怠惰なんですね。もう一周回って感心しますよ。)

(そりゃどうも。)

そこでパールとの会話を打ち切る。そして俺達がエッグを除いて話し続けていると、ついに止めたはずの時限爆弾が動き始める。

「み、皆本当にごめん。」

「もう気にしなくていいよ〜。」

お前が言うなよ、マリー。そう思ったのは俺だけじゃないはずだ。

「そうだ。もっと自信を持て。自信がないと技はついてこないぞ。」

ラギーナ、…本当に変わったな。複雑な気分だよ、俺は。

「そうだ。そんな気にするな、無事に終わったんだし。なぁ、バルア?」

「…ああ。」

お願いだから戦いの訓練に誘ってくれるなよ。こいつだけは嫌だ。何より性格が合わないからな。

「そ、それでその、えっと……何もない。」

危ねぇ!!、こいつ、絶対いらないことを言おうとしただろ。なんとなく想像はつくけど。

だがそれでも一番突っ込んで聞きそうなマリーは沈黙を貫いている。そして他の奴らも聞かない、一歩間違えれば自分たちの首を絞めることになるかもしれないから。

結局その後は何事もなく、学園に戻るのであった。



(疲れたなぁーー、今日も。)

(今日は確かに色々ありましたからね。)

(人間関係もダルイし。…お前は楽でいいよな。)

(何を仰るんですか、私は情報収集からマスターの世話と幅広く対応してるんですよ。)

(…さいですか。でもお前は疲労とか感じないんだろ?)

(そうですね。人工知能ですから。)

まあ、だからって人工知能は羨ましいなぁとはならないんだけどな。

そんな会話をしつつ、トイレから出ようとすると辺りが闇に包まれた。

これは魔法か!?、なんでまた俺!?、ざけんなよッ。

(解析できません。未知の魔法です!!、気をつけてください。)

(そいつはどうも。)

チッ、何とかしてくれよ、結局俺に丸投げかい。

「バチバチ」

銀の魔力を展開し、銀髪となる。

こんなところで出し惜しみして死ぬとかアホらしいからな。

(さて、ぶち破ってもいいか?)

(やめたほうがいいでしょう。効果がわからない以上、こちらから動くのは愚策です。)

(…なら待機?)

(不満そうですね。ですが、それが最善だと考えられます。)

(…分かった。)

俺は待てる子、とりあえず状況がはっきりするまで警戒しよう。


ーー??ーー

「ジェドが行方不明になってからもう数年が経つ。おかしいと思わないか?」 

「そうだね。でも強力なモンスターが出たっていう情報はないよね。」

「大方悪い女にでも引っかかったんじゃろうて。」 

「ありそうだねー。でも相討ちで死んだって可能性もあるよね?」

「そもそも彼は生きているのでしょうか、それとも死んでいるのでしょうか?」

「…知らぬ。」

「じゃが、魔剣士大会には流石に出てくるであろう。次は儂が勝ってみせよう。」

「無理なんじゃない?、もう爺ちゃんいい歳だし。」

白髪の女がサラリといったセリフに老人は顔を引きつらせる。

「そのようなことはない。儂は常に成長しておるでな。」

「…………うーん、そっか。」

あたりになんとも言えない空気が漂う。

「…それで貴方は銀仮面(?)を探しているんでしたっけ?」

「そうなんだよ!!、あとから合流するって言ってたのに来なかったんだよ!!」

「逃げられたのか。」

「次会ったら絶対とっちめてやるんだから。」

「そ、そうか。」

白髪の女の怒りに押される。

「でも皆が揃うのは久しぶりじゃのう。」

「そうだな。」

情報交換を兼ねて久々に集まったSS級冒険者達、扱う情報も高度なものばかりだ。

「で、俺も聞きたいんだが、ヴァルクス商会の金庫を盗んだ奴に関する情報はないか?。シークに依頼したんだが、まだ王都に入れないようなんだ。」

だが、知っているものは誰もいないようだ。

〈絶対に犯人を見つけてぶち殺してやる。〉

母国が滅亡してしまった。それが復讐の炎を生み出してしまった。どこまで焼き尽くされるか、それが問題である。









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