第37話 9歳

それから俺たちは無事に自分たちの屋敷へ帰った。

たまにセラから手紙が来て、それに返答し、普段の日課もこなしているうちに一年が経っておれは9歳となった。

あの帝都の魔道具の店で買った指輪だがどうやら物を収納できるものだった。

パールがいうことには空間の魔法陣が仕組まれているのだとか。

どれくらい入るか試したところ、大きいリュックぐらいだった。

まあまあ便利だが、残念なのは物を取り出そうとすると全部出てくるのと、指輪の中でも時間は進んでいるので食べ物が腐るということだった。

また今年でマルスが11歳となったため、帝都で恒例のパーティがある。


はあ、それにしてもまだ9歳か。精神が育っているせいか、時の流れが遅く感じるなぁ。

あと最近、古代文明の遺跡を探したりしているんだが、これがなかなか見つからない。

パールにも尋ねたりしたが、わからないという返答だった。

使えない奴だ。

今日もいつものように午前中の稽古を終わらせて依頼を受けに行く。

ん、なんかいつもより人が多いな。嫌な予感がする。

「あっ、ギルドマスター、銀仮面さんが来ましたよ。」

「なに、おお、来てくれたか。」

ちっ、来んなよ、ゴリラ。

「何かあったのか?」

「ああ、実はモンスターの群れがこっちに向かってきているらしい。おそらくモンスタースタンピードとのことだ。」

げぇぇぇ、これはあかんやつや。だいたいこういうので無双して祭り上げられるやつだろ。

俺はそんなのごめんだ。かといって、今から転移して逃げたら銀仮面として活動できなくなる。冒険者たちは民を守るために存在するからだ。くそったれ。

・・・・・・ん?よく考えたら銀仮面の正体はバレてないわけだから暴れまわっても問題なくないか?

いや、まだだめだな。SS級に目をつけられたら仮面をはがされて正体がばれるだろう。そうなったら別の大陸に行かなければならなくなる。

言語も通じるかわからないから暴れるのはなしだな。

となると、無難に戦えばいいか。

「そうか。」

「実はその中に火竜の古竜が含まれているらしい。2年前に帝国北西部で確認され、S級冒険者たちが撃退してSS級冒険者が古竜を倒すために派遣されたんだが発見することができなかったんだ。それでもしばらくは警戒していたんだが、全く動きがないということで警戒が緩んでいたんだ。」

ギャーー-----。あのときのやつか。なんで俺にかかわってくるんだ。

ざけんなよ。

それにしてもSS級のやつもさっさと見つけてさくっと倒せよ。

「それで今回の迎撃に出る冒険者はどうなってるんだ?」

「ああ、突然のことであまり集まっていない。本部にSS級冒険者も要請しているがおそらく間に合わないだろう。」

「間に合わないということはもうすぐモンスタースタンピードが来るのか?」

「ああ、あと三十分でやってくる。」

なー-にー--。シャレになってねぇんだよ。

もうすこし心の準備とかいるだろ。

「集まった冒険者たちはすでに配置についている。お前も西側に向かってくれ。」

「了解した。」

俺はできるだけ余裕があるように返答し、持ち場へと向かった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る