第129話 交渉2

俺たちは応接室へと通された。

できればこいつを俺の手駒にしたいんだよな。色々脅してやろう。

(パール、理由をつけてローナを追い出せ。)

(了解です。)

「それで本当に妻の病気は治るのか?」

「勿論だ。だがその前に、ローナ嬢にはこの部屋から退出してもらいたい。」

「えっ、どうして!?。意地悪しないでよ。」

「意地悪ではない。報酬の話をするからな、生々しい話を聞いてほしくない。」

「ならジンはいいの?」

「ああ。ジンが報酬を求めることになるからな。」

「えっ、どうしてジンが求めるの?」

うーん、よし、これでいくか。

「そういう約束だからだ。手を貸してもらった時に生じる利益は俺が受け取るっていうな。」

「むぅー----。」

「そういうわけだから出ていってもらえるか?」

ちらっ、ローナが父親の方を見る。ガルドが頷くのを見てトボトボと肩を落として退出する。

悪いな、ローナ。こっから先は大人の話なんだ。うまく交渉したい。

そして防音のシールドを張る。

「ほーう、シールド魔法か。さすが、銀仮面殿。それでジン君はどうやって銀仮面殿と知り合ったんだね?」

「その答えに意味はないでしょう?、ガルド様。今回だけゼロの手を借りれるんでね、報酬の話をしましょう。」

「ふむ、では白金貨1000枚でどうだろうか?」

おおっ、すげぇな。さすが悪いことをしているだけはある。だが、それは俺の求めるものではない。

「駄目ですね。」

「白金貨1000枚で駄目だと。なら2000枚でどうかな?」

〈マスターは何を求めるつもりなんでしょうか?。さっぱり分かりませんね。〉

「お金の問題ではありません。」

「では何を望む?」

「そうですね。強いて言うならばこの家の権力ですかね?」

満面の笑みでガルドに要求する。

ムカつくだろうな。俺だったらイジメって言われないレベルで関わらないと思う。

案の定、ガルドは顔を厳しくしている。

〈さすがマスター、転んでもただは起きませんね。必死に落ちてたものを拾いすぎでしょう。〉

「…本当に妻を治すことができたら考えよう。」

「考えるじゃ困るんですよね。確約してください。」

「はぁ、分かった。いいだろう。」

おいおい偉そうだな。どちらが上か分からせてやる必要があるな。

「本当ですね?。もし約束を破ったら闇オークションのことをバラしますから。そうなったら困るでしょう?、奥さんが治ったところで連座で処刑は確定ですからね。」

「き、君はどこまで知ってるんだ?」

「すべてを。国庫からもちょろまかしているそうじゃないですか?」

ガルドは顔面蒼白だ。

ちょっと追い詰めすぎたかな?、でも裏切られたら困るしな。とどめを刺そう。

「いいか、俺の手駒になれ。そうすればお前の家族と家を守ってやる。」

まぁ、無理しない範囲でだけど。

「…本当ですか?」

「ああ。」

この瞬間、両者の立場が確定した。

「…分かりました。」

「おい、ガルド。まずは第1皇子の陣営から手を引け。そして中立を保て。」

「そ、そんな。今更手を引いたら第1皇子の陣営に叩かれますよ。」

「問題ない。第1皇子は負けるからな。そんなところについてもしょうがないだろう?」

まぁ、実際は分からんけど。でも何となく第7皇子が勝つような気がする。

「そうなのですか?」

「ああ。」

自信があるように断言する。

「分かりました。従います。だからどうか妻を治してください。」

「分かった。」

「ようやく話し終わったようだな。では治しにいこうか。」

ふふ、俺の勝ちだ。まぁ、あれだけ手札があれば勝つのは当たり前なんだけど。でも

おそらく当分の間は力を失うだろうからな、しばらくは使えないな。


ー--??---

「シャンデリア様、報告です。何やら第3,第4皇子が動き始めたとの情報が入りました。」

「そう。あの二人は頭がおかしいから要注意だわ。はぁ、ますます激化するわね。ところで誰が、私がミラを妬んでるという噂を流したかは特定できた?」

「いいえ、まだできておりません。申し訳ありません。」

「そう。おかげでノルと争うことになっちゃったわ。あの子とは争いたくはなかったのだけど。」

「仕方ありません。帝位争いですから。」

帝位争い、それは初代皇帝が編み出したもの。長子がボンクラならば国は割れてしまう。それなら争いを公認しようではないかということになったのだ。帝位争いが起きないのは誰もが認める人物だけ。だがそんなことはめったにない。貴族が皇族を担ぎ上げるからだ。これまでも何度も悲しい結末となったことは数えきれない、兄弟で殺しあうのだから。

〈絶対にもっといい方法があるはずよ、血を流さなくてもすむ方法が。でも現状を変えるには皇帝になるしかないのよ。そのためには絶対に勝たないといけない。たとえ血が流れたとしても。〉

シャンデリアの意志は揺るがない、よりよい未来のために。


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