第43話 遭遇2

あれから2日が経ち、マルスたちは帝都へと旅立って行った。

ふふ、朝の稽古がなくなったのは純粋に嬉しい。まあ、朝は魔法の練習をするんだが。

昼ごはんを食べ終わり、散策に行く事にする。

(よし、遊びに行くぞ。仮面をくれ。)

幻術も使い、いつもの冒険者の恰好をする。

(了解です。どこに行きますか?)

(うーん、とりあえず適当にブラブラしようぜ。)

(はぁ、だから言っても無駄だと思いますが計画性を大事にしましょうよ。)

パールの小言を聞き流し、東の方向へ向かう。今回は転移を使わずに空間魔法で重力を操り、上空をゆっくり移動する。

おぉ、きれいな景色だ。心が洗われるようだ。しかしこうして見てみるとやっぱり星は丸いんだな。

「ちゃんと録画してるか。」

「常に録画してますよ。」

「…そうっすか。」

ブライバシーもクソもないな。

いくつかの街を通り過ぎる。

「マスター、街には寄らないんですか?」

「まあ、別にいいかな。行くなら帝都のほうがいいし。どうせそんな珍しい物もないだろ。それよりはきれいな景色を楽しみたい。」

景色を眺めていると前方に巨大な青色の龍が見えた。

「おい、あれは水龍か?」

「そうですね。」

そうですねじゃねぇだろ。何でこんなところにいるんだよ。凄まじい圧を感じるぞ。

間違いなく、あの古竜より強い。

「そんなに焦らなくても大丈夫ですよ。こちらから仕掛けなければ攻撃してきません。」

「根拠を示せ、根拠を。そういう言葉だけなのは信頼できない。おい、こっちに向かってるぞ。」

水龍はゆっくりだが、着実にこちらに向かっている。

その時、俺はあることを思い出す。

「なぁ、そういやさ、あの古竜、なんか約定とか言ってなかったか?」

「言ってましたね。それにあの古竜は古竜にしてはあまり強くありませんでした。おそらく長い眠りから覚めたばかりだったんでしょうね。」

えっ、あれで全力じゃ無かったの?

恐ろしいな。本気のブレスだったら死んでたかもな。

「なぁ、そういう情報はちゃんと共有しようぜ。」

「すいません。忘れてました。」

棒読みじゃねぇか。

「ということは、あの古竜は人間と何らかの約定を結び、そして長い眠りについた。だが目が覚めると約定は守られていないことが分かり怒ったということか?」

「その可能性が高いですね。」

おいおいおい、不味いだろ。まじで勝手に変な約定を結ばないでほしい。

「とりあえず逃げよう。」

「転移」

俺は念の為、屋敷とは違う方へ転移する。

チラッと視力を強化して後ろを見ると水龍が後ろから追いかけてきていた。

「くそっ、どうなってんだよ。来んなよ、まじでさぁ。」

「人気者ですね。」

おい、ポンコツ、ぶっ壊すぞ、コラ。

「転移、転移、転移…」

俺は連続で転移して逃げる。

ああもう、こんなことなら家でおとなしくしてりゃ良かった。

「そろそろ、逃げ切ったかな。」

周りには人が居そうにもないところで後ろを振り返ると、そこにはやつがいた。




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