第23話 気まずい

セリーヌという冒険者の元に全員が集まり、俺以外、涙を流している。

正直、気まずすぎて早く帰りたいが、なんとなく雰囲気のせいで帰れない。

このままじゃ埒が明かないので、

「彼女を早く弔ってやるべきだ。いつまでこのままでずっといるわけにはいくまい。もうすぐ、日も暮れることだし。」

と話しかけた。

すると、緑髪の女性に睨まれた。

いやいや、俺だって言いたくないよ、こんなこと。でも、夕食までに帰らないと、大事になるんだ。

「…そうだな。せめて、ゆっくり眠れるように墓を作ろう。」

「ジョゼフ!」

「彼の言うとおり、もうすぐ日が暮れる。そうなれば俺たちは身動きが取れなくなってまう。」

その言葉を聞いた女性は顔を歪めて、しばらくして頷いた。


俺たちは彼女を火葬し、土を盛って墓とした。

重い雰囲気で帰り、俺は街に入ってすぐ脇道に逸れ、すぐ帰っていった。


その日の夜、ベッドで

「マスター、大丈夫ですか?」

「ん、まあ、そうだな。正直、楽観視していた部分もある。だが、冒険者はハイリスクハイリターンであることを再認識したよ。それに、俺は治癒魔法を覚えていないことに気づいた。俺は実に愚かだった。」

「………マスターは後悔していますか?」

「悲鳴が聞こえてすぐに、向かわなかったことか?」

「はい」

「いいや、してない。俺は俺より強いやつがいることを知っている。だから、慎重になるに越したことはない。それに、俺は他人のために命を賭けられる人間じゃないからな。でも、人間ってそんなもんだ。自分がかわいいんだ。」

「…そうですか。」

実際あのとき、本当に行きたくなかった。だから、俺は何かあればいつでも転移できるように構えてた。

そして結果として、大丈夫だと判断してオーガを倒しただけだ。


その後、帝都から家族が帰ってくるまでおれは、依頼を受けるのをやめ、自分を傷つけて治癒魔法の習得に努めた。


「よし、コツは掴んだ。傷を魔力で包み、細胞を修復する様子をイメージすれば早く治るな。」


「コンコン」

「はい、」

「失礼いたします。旦那様たちの馬車がお見えになりました。」

「分かった、出迎えるよ。」


そして家族と再会したのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る