第10話 マルスと稽古

「起きてください、朝ごはんの時間ですよ。」

「うーん、もう少し寝かせて」

「駄目です、マルス様はもう席でお待ちですよ」

「分かったよ。分かったからもう出ていってよ。ミリア。」

「出ていきませんよ。どうせ二度寝するつもりでしょう。ほら、はやく着替えてください。」

「どうして分かったの?」

「長いこと一緒に居ますからね。それくらい分かります。」

伊達に年を食ってないなと思った瞬間、寒気がした。

「ジン様?」

「何でもないよ」

勘鋭すぎるだろと思いながら慌てて朝食を食べに行く。

「おはよう、ジン。遅かったね。」

「おはよう、マルス兄さん、今日は何するの?」

「そうだね、午前中は剣の稽古をして午後は読書かな。」

「そうなんだ、稽古頑張ってね。」

「ジンも一緒にやるんだよ。父さんにお願いされてるからね。」

アーレークー、やってくれるな。

「ええ、のんびりしたいんだけど。」

「終わってからすればいいよ」

そんな会話をしていると朝食が食卓に並び始め、モクモクと食べ始める。

この世界のご飯は新鮮でとても美味しい。嫌いな野菜でも美味しく感じるからな。好んで食べようとは思わないが。

食べ終わってから歯磨きなどを済ませる。

「そろそろ、稽古しようか」

「そうだね、早く終わってダラダラしよう。」

中庭にでて準備運動、素振りを終えると

「さあ、模擬戦やろうか」とマルスが言うのですることにする。

正直、本気を出せば全力のマルスも倒すことができるが余計な火種は作りたくないので、わざと負ける。 

「カンカンカンカン」

互いの木剣がぶつかる音が響き渡る。

「ジン、やっぱり強いね。僕がジンの歳のとき、そこまで強くなかったけどね、年下に負けるわけには行かないんだ。」

そう言ってマルスはギアを上げる。

いやいや、その理屈だとあなたはおじいさんになっても若者に勝とうとしていることになりますよ。

…はは、こんなこと思う時点でひねくれているよな。

俺がわざとすきを見せると、マルスは「そこだ」と言いながら強く俺の木剣を下方向に叩き、胴に一撃を入れてくる。防具を着けているとはいえ、なかなかの衝撃があった。

「くっ」

「よし、ここまでにしようか、ありがとうございました。」

「ありがとうございました。」

そういいながら俺たちはミリアから、タオルを受け取った。

ふう、やっとゆっくりできるな、昼飯食ってから冒険に行くか。

俺は魔力を放出して、周りの地形や物を把握できるようになり、その状態でも転移できるようになった。魔力を円形に放出したり、一方向に放出したり、使い分けも可能である。しかし、目に見えない所を想像して転移しようとしても出来ないから、少し不便ではある。

でもまあ、転移を繰り返すうちに魔力消費量は最小限になったからな。いまなら50回は連続して飛ぶことができる、まだ魔力の3分の1は扱えないんだけどな。無理に扱おうとすると、体が弾けそうな感覚になってやばい。おそらく身体が育ち切っていないから耐えきれないんだろう。それに視力を強化すれば10キロ先まで見える。若干引いたが。つまり転移で片道250キロまで行けるということだ。

さらに、俺は毎日魔力を消費しているからか、回復スピードも早い。一日で扱える魔力を全部使っても次の日には、半分程度回復している。

若いってすばらしいな。








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