第177話 名も無き村

あれから東へ、たまに出てくるモンスターを片付けながら進んでいると、いつの間にか日が傾く時間となっていた。


不味いな、もうすぐ日が暮れる。やっぱり前の街で止まったほうが良かったか? いや、その前の都市で?、でも流石に早すぎた気がするんだよな、宿場町を出発してから一時間も経ってなかったし。

「くそ、何で街がないんだよ? この際、宿場町でもいい。」

(選択ミスですね。どうします?、野宿でもしますか?、避難船への避難はだめですよ。)

「何のための避難船なんだよ…。」

しかもここにきて俺の眼前に立ち塞がる立派な山。まさかの峠越えだ。

「セキトバが思ったより良い仕事をしてるな。邪魔で邪魔で仕方がない。」

こいつがいなかったら、すぐにでも街へ飛んでいくのに。もっと俺に相応しいペットはいないのか。

(いいハンデじゃないですか。それくらいのマスターの足を引っ張る要素がないと旅が成立しませんよ。)

実にもっともらしい言い分だ。確かに俺だけだったら旅とは言えない旅になる気がする。絶対、街道沿いに移動とかしないし。

「…なぁ、この近くに宿はあるか?」

(普段なら答えませんが、この状況ですからね、お答えしましょう。…この近くに宿はありません。)

なるほど、昼夜逆転生活の始まりか。それはちょっと避けたいな。今の俺は成長期、成長してもらわないと困る。

「…野宿かぁ。」

(マスター、私は宿はないと言いましたが、村がないとは言ってません。)

「え?、それって村に泊まれってことか?」

村なんて石を投げられて追い出される未来しか見えん。それか夜中にこっそり殺されて荷物を奪われるか。

(金さえ支払えば問題なく泊まれますよ。)

「また金かよ!!、人情じゃないのか?」

(流石に余所者までには無理でしょう。村は排他的ですから。)

「そんな排他的な村でさえ金で懐柔できるのな。」

泣けてくる、世の中拝金主義者しかいないのかよ。いずれ社会主義なんて思想が出てきそうだな。

(どうしますか?)

「…村なぁ…、嫌だなぁ。睡眠薬でも混ぜられて殺されそう。」

(…ネガティブすぎませんか? 被害妄想がすぎます。)

「それで実際に起こったら想定外とか言うんだろ?、俺はそんな間抜けなことにはならない。特に命がかかっている場合はな。」

(ですが野宿はもっと危険ですよ?、夜行性のモンスターがうろついてますからね。特にこんなに山に近ければ。)

「えー…、マジかよ。」

どうしよう、俺だって村で危害が絶対に加えられると思っているわけではない。単にコミュニケーションが嫌なのと、限りなく少ない可能性を危惧しているだけだ。こういうときに土魔法を使えないと不便だよな。

「…ちなみに近くの村まではどのくらいだ?」

(すぐそこですよ。山のひらけた所に存在します。)

…行くだけ行ってみるか、どうせ通らないといけないしな。それで良さそうだったら泊めてもらう…か?、多分そんなお願いをする勇気は出ないだろうけど。

「とりあえず村の前を通ってみるか。それを見て判断しよう。」

(往生際が悪いですね。いつかは泊まるかもしれないんですから、早く経験しておいたほうがいいのでは?)

「お前の言うこともわかる。けどな、嫌なことの回数を抑えられるなら抑えたいというのが人間だ。なぜなら皆、快楽主義者なのだから。」

ドヤッ!!、この人生で一番のドヤ顔が決まった気がする。

(マスターといえども、その意見には同意できませんね。博士は常に苦しくても前に進もうとしておられました。ゆえに人間全てが快楽主義とは言えません。)

博士ってやっぱり頭おかしかったんだな。人工知能に雨の観測装置をつけるぐらいだからな。

「ふーん。」

(興味なさそうですね。)

「実際どうでもいいからな、過去の人間のことなんて。」

歴史なんて所詮権力者がいいように作ってるんだ。俺は実際に体験したことしか信用しない。

(ドライですね。)

「それが俺だ。まあ、それだけが理由じゃないけどな。」

(では他の理由とは何ですか?)

「ささやかな抵抗だ。」

(ささやかな抵抗、ですか?)

「ああ。だいたい権力者って良い意味で歴史に名前を残したがるだろ?、けど、それに乗るのは癪に触る。だから俺の中ではそいつを覚えないことで、そいつの望みを絶っているというわけだ。」

どうして俺の名前は歴史に残らないのに、他の残っている奴らの名前を覚えないといけないんだ?、俺の貴重な脳内リソースを死者の名前に割くのは虫唾が走る。 

(…穿ちすぎじゃないですか? きっとそこまで歴史に名前を残そうとか考えてませんよ。)

「いーや、お前は人間に対する理解が浅い。人間はな、業が深すぎる生き物なんだよ。」

その典型例が俺だ。前世じゃ無力だったから大人しくしてたけど、力を持ち始めた途端にこれだ。浅はかにもほどがある。そして最も業が深いのは、分かっていながらやめようとしないこと。これに尽きる。

(…私は人間を信じたいですけどね。)

「!?、…俺もだ。…ところで、今俺はどこにいるんだろうな。もはや地図を見ても分からん。」

もしも誘拐犯から逃げてこの状態だったら嬉しいのかな?、それとも恐怖が勝つのかな? どうでもいいけど何か気になる。

(今更ですね。)

「この地図、本当に縮尺があってなさすぎるんだよな。たまに街道に立っている木の看板で確認してもさ、やっぱり色々ズレてるんだよ。」

(あえて国がズラしているのかもしれませんね。)

「お得意の軍事機密か。」

(はい。とはいっても各国はそれぞれ工作員を使って地形や距離を計測していると思いますけどね。)

「確かに。この広さじゃ、全部はカバーしきれないよな。」

パールと会話しながら山道を進んでいるとひらけた所に出た。すると道から外れた森の中に建物らしき姿が見えたのでゆっくり近づいていく。

「おいおい、まさかあれが村か?」

(そうですね。)

「あれを村と呼ぶのは抵抗があるんだが?」

村の入り口には村を囲っているように見える柵と武装した門番がいる。しかも火をたいているため、明るい。

(このあたりは野盗が多いのでああも厳重なんでしょうね。)

「…流石にあそこに泊めてくださいって言うのは無理だな。」

コミュ症にはハードルが高すぎる。しどろもどろになって結局逃げ出す未来しか見えない。

(では野宿しますか?)

「そうする。満点の星空でも見ながらのんびりするさ。」

(そうですか…、マスター、大切なことを忘れていませんか?)

「…大切なこと?、何かあったっけ?」

嫌な聞き方をするな、こいつ。俺にミスがあるみたいな言い方じゃないか。

(夕食はどうするんですか?)

「ああっ!?、忘れてた。そうだ、夕食だ。…途中で倒したモンスターの肉はどうだ、ワイルドボアを回収してただろ?」

(味がしなくていいのであればありますよ。)

くそが!!、毎食店で食べるつもりだったから調味料なんて買ってないぞ。

「…でもあそこに声をかけに行く勇気はない。」

(勇気とは元から存在するものではなく、捻り出すものである、博士の勇気の定義です。)

「嫌な定義だなぁ!!、どうやら俺とは違うようだ。俗に言う見解の相違ってやつだな。」

博士、あんたとは友達になれそうにない、実に残念だ。

(…マスター、博士は何よりも人間の尊厳を大切にしていました。それを失えば、生物学上生きていたとしても死んでいるのと同義だと。マスター、このまま嫌なことから逃げ続ける人生を送るのですか? それで胸を張って生きていることを誇れますか?)

グハッッッッ!?、やめろ、心に刺さりすぎる。俺だって駄目だって分かってるけど、それでも今更変えられるかよ。言われたぐらいで変えられるならとっくに変わってる。

「……。」

(なるほど。変わりたくても変われない、と。)

!!?!?、俺の心を読んだ?、破壊すべきか?

(マスターの思考をトレースしただけですよ。)

…もしかして、俺ってとんでもないことしてるんじゃ…。数百年後には大陸、いやこの星ごと管理されてそう。

「…そのとおりだ。でもな、嫌なものは嫌なんだ。楽な方があったら俺はそっちを選ぶ、長年の経験で判明したことだ。俺は頑張れない。」

(…そうですか。)

〈ここまで言っても頑なに抵抗するということは、考えを改めさせるのは無理そうです。しかし日常生活では経験できない事をたくさん経験してほしいですからね、厳しくいきましょう。〉

(では夕食は寂しい食事ということでよろしいですね。あっ、モンスターの解体はご自分でなさってください。これも旅の醍醐味ですから。)

ガッデム!!、モンスターの解体なんてやったことないぞ。

「なんでだよ。今までやってくれてたじゃないか。」

(マスターの成長を願ってのことです。いつまでも私がやっていたのではマスターのためになりませんから。)

「願わなくていいからやってくれよ。」

(命令ならやります。命令ですか?)

その聞き方はずるいだろ。何となく命令しづらい。

「…チイッ、わかったよ!!、声をかければいいんだろ、かければ。」

〈計算どおりです。マスターはあまり私に命令したくないようですからね。〉

(そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。子供を受け入れないほど狭量ではない…、と思います。)

「はぁ、貴族の子供ムーブでいくか。」

キャラを演じきればいいだけだ。俺の得意分野じゃないか、頑張れ俺。

俺は覚悟を決め、門番に話しかけに行く。

「そこのお前、止まれ!!」

門番に槍を向けられ、少し固まってしまう。

「子供が何用だ?」

とりあえず争う気はないことを示すため、馬から降りる。

「突然すまない。私の名前はメネラウス・チェバ。どうか私を村に泊めて頂けないだろうか?」

(直球ですね。それに話し方も違和感しか覚えません。)

(今、良いところなんだから黙ってろ!!)

空気を読めないところは所詮無機物の塊だな。

「…少し待て。村長に尋ねにいく。妙な真似はするなよ。」

「もちろんだ。」

二人いる門番のうち一人がいなくなり、気まずい雰囲気となる。

(こういうのが嫌いだから、俺は来たくなかったんだ。)

(それこそ今更ですよ。諦めましょう。)

やっぱり人間関係は鬱だな。キャラを演じるたびに心が磨り減っている気がする。


その後しばらくすると、門番が戻ってきた。

「お前の入村を認めるそうだ。だが人柄を見るまでは泊まる許可は出せないんだとよ。」

「…そうか。」

そうだ!!、そっちが断ってくれれば避難船に泊まれるかもしれない。流石にパールも村に泊まれないなら譲歩してくれるだろ。

「というわけで、俺について来い。村長に会わせてやる。」

「…そいつは助かるね。」  

「言っておくが、変なことをしようとすれば子供でも容赦しないからな。よーく、覚えておけよ。」

ハイハイ、共同体の結びつき、スバラシイ、スバラシイ。一生搾取されながら田んぼでも耕してろよ。 


村の中を歩いているとあちこちから視線を向けられる。

割といい服着てるな、そこまで貧しくないのか。

(人気者ですね。)

(これは驚いた!!、最近の家電製品は皮肉も言うんだな。)

(家電製品って何ですか?)

(フッ、気にするな。)

ただの侮辱用語だよ。

(そうですか。…マスター、一応知らせておきます。マルスもマスターが旅に出たことを知って怒り狂ってますよ。ちゃんと僕が躾けておくべきだったと。) 

(このタイミングで言うことか?、…にしてもマルスのやつ性格変わってないか?)

ボッチを拗らせすぎだろ。躾けるって…、誰かに優位に立ちたいのが丸わかりじゃねぇか。

(孤独すぎるとおかしくなる、非常に有用なデータが得られました。本当はもっとサンプル数がほしいんですけど、私が演出するのは駄目ですよね?)

(他国ならいいけど、情報収集は怠るなよ。)

他国ならいいだろ。優秀な奴が潰れる分にはウェルカムだ。

(勿論です。) 

(出来れば性格が良いやつを標的にしてくれ。気に食わんからな。)

(性根が腐りきってますが、奇遇ですね、私もそのつもりでした。きっと素晴らしいデータが得られるはずです。)

声が弾んでるな。博士の気質が知らず知らずのうちに反映されててもおかしくないな。


それから門番に案内されること数分、どうやら到着したようだ。

「着いたぞ。ここが村長のうちだ。失礼な真似はするなよ、命が惜しいならな。」

こいつ、俺のこと嫌いなのか?、気持ちは分からなくもないけどさ。

「そうか、感謝する。」

俺はどうやって村長を捌くかを考えながら家の中に入るのだった。


ーー??ーー

「…これはなんてことだ!!、都市が破壊しつくされている。この都市のギルドマスターはどこだ?」

「市民の誘導避難の最中に残念ながら…。」

「…そうか。生き残った人たちはどこにいる?」 

一瞬言葉に詰まるが、詰まっている暇などない。やるべきことは多々あるのだから。

「南の隣街です。」

「ふむ。ではモンスターたちはどこに行ったかは分かるか?」  

「都市を横断して西の方に向かったと。」 

「西だな?、早急に支援を要請しよう。確か黒狼の調査にSS級冒険者が来てたはずだな。」 

「はい、すでにマーテル公国からもSS級冒険者の投入を要求されています。それと気になる証言をしている者がいました。モンスタースタンピードの中に魔物が紛れていたと。」 

「あり得ん!!、見間違えじゃないのか?」

「その可能性は低いかと。すでに複数の証言が得られています。」

「…ではその者たちに会わさせてくれ。一度直接聞きたい。」

〈魔物が紛れていただと?、バカな、絶対にあってはならんことだ。あの厄災の再来だけは避けなければ。〉

「分かりました。すぐに手配します。」


ーー??ーー

「ジンが旅に出た、ですか?」

「ああ。置き手紙があったらしい。学園としては探すことはしないそうだ。一応ジンの兄であるお前に伝えておこうと思ってな。お前は馬鹿な真似をするんじゃないぞ、これ以上いじめられたくないならな。」

「ッッッ!?」

「要件はそれだけだ。迎えが来るまで大人しく待っていろ。」

担任はそれだけ言うと笑いながら去っていく。

〈くそくそ、どうして僕がこんな目に合わないといけないんだ。…ジン、良くも僕に恥をかかせてくれたな!!、絶対に許さないぞ。〉

度重なる嫌がらせにマルスは耐えきれなかった。心を守るため、心を変えるくらいには。


ーー??ーー

「帝国が揺らいだな。」

「そうですね。来ますよ、戦の時代が。」

「いつの時代も戦争か。救われんな。」

「ええ、だからこそ俺が終わらせます。それにしてもあなたの執念深さには脱帽です。まさかあれだけの組織を作り上げるとは。あれだけで二十年は違いますよ。」

「フン、千年もあればあの程度誰でも作れる。お前は二十年あれば無くても問題ないなようだがな。しかし問題はうまく使いこなせるかどうかだ。」

「ですね。」

大陸に根を張る組織。それは長い時間をかけて作られた。バレないよう巧妙に。

そして創始者は今まで幾度も組織を時の有力者に貸し与えた。だがその誰もが私利利欲に使うだけで、自分の思うようには使われなかった。しかし今回は違う。

「私はお前に期待している。今まで世界の王は…」

ここで言葉が止まる。

「居たんですね?、かつては。」

「私が生きた時代よりも前の話だ。もはや神話と呼んでも差し支えない。それに私の思い描く王ではない。」 

「なるほど。」

〈思い描く王ではない…、武王か。それと世界の王ということは全てを兼ね備えた化け物かつ大国の王。…帝国皇帝第100代レオンハート・ロウ・ギラニアか。〉

「どうやら分かったようだな。」

「ええ。ですがあなたから頂いた資料がなければ辿り着けなかったでしょう。」

「当たり前だ。あれは私が独自に集めたものだからな。念の為に紙媒体で保存しておいたのが功を奏した。」

ここでホログラムがぶれ始める。

「…どうやらもう長くはないようだ。ギリギリ導き手に出会えたのは奇蹟であった。」

「…もう往きます、当分ここには来れません。」

「それでいい。私が渡せるものは全部渡した。も満足しているはずだ。」

ここでホログラムが完全に消える。

「…来いよ、旧時代戦争。存在ごと捻り潰してくれる。」


ーー??ーー

「殿下、全て滞りなく。」

「そう、ありがとう。遺体は陛下に見せるわ。きれいにしておいて頂戴。それと側付にはエレンを任命します。」 

「わ、私ですか!?、す、すいません。」

「いえ、驚くのも分かるわ。でも側付は信頼できる人でないといけないの。」

〈それだけが全てじゃないけどね。〉

「分かりました!!、私で良ければ。」

「ならお願いね。」

〈リーバーにゼルドア、あなた達だけは絶対に許さないから。〉


ーー??ーー

「何!?、マーテル公国でスタンピードだと!!、で、被害は?」

「一つの中都市が壊滅です。まだモンスタースタンピードは解決されてないとのことです。」

「ドン」

エンベルトは思いっきり壁を叩く。

〈何ということだ。これではマーテル公国との話は無しになるぞ。私の計画が…。〉

エンベルトは恐怖していた。自分以外の者が帝位につくことを。きっとあの弟や妹達は自分を殺す。

〈わ、私が帝国を導くんだ。私以外にはいない。〉

もはや最盛期のような勢いは誇っていない。だが、腐ってもギラニア帝国の皇族。ただ堕ちるはずもなかった。


ーー??ーー

「もうここらで講和を結ぶべきではないか?」

「何をいうか!!、恥を知れ、恥を。このままやられっぱなしでは東部諸国連合が舐められる!!」

「どの口が言うのだ!! ならどうしてラーマス王国が侵攻された時に全力で対応しなかったのだ!! 小出しにするからすべて撃破されたではないか。貴国の策だ!!、忘れたとは言わせぬぞ!!」

「グッ…」 


「そうだ。」

「自信満々に主張しておられたな。」

「どの面を下げて言えるのか。」

「恥という言葉を知らぬようだ。」

 

各方面から顰蹙を買い、盟主国としての威厳はもはやない。

「その話は後にしましょう、今すべき話題ではありません。」

盟主国の座を狙う、タイテン王国が主導権を握りにかかる。

「そのとおり。言い争っている場合などではない。今まさに2カ国目が落とされるかどうかという瀬戸際なのだから。」

「皆様、こういうときのための相互同盟です!!、我が国の防衛を!!」

必死で訴える当事者国。だが、すんなり通るはずもない。

「防衛というのは戦い続けることを言うのではないですぞ。講話で和平の道を探るのも防衛の一つです。」

「最もであるな。」

「然り、否定はできぬ。」


「そ、そんな。」


「とりあえず改めて状況を確認しましょう。奴らの戦力は約2万。本国から支援はないようですから、現在もそのままのはずです。それに対して我らは総勢5万。出そうと思えばまだまだ出せますが、現実的とは言えますまい。」

「倍はあるのか。なら戦っても勝てそうだが。」

「何を仰るか。我ら連合は一度も共同で軍事訓練をしたことがないのですぞ。足並みが揃うはずがありませぬ。」

「しかし現在、相手をかなり消耗させているのは確かです。脱走兵を尋問してもかなり士気が下がっているようです。」

「悩ましいな。」


その後も様々な情報が出し尽くされ、いよいよ決定に移る。

「では継戦すべきだと思う国の代表者は挙手を。」

パラパラと手が挙がる。


「賛成5票、棄権2票。よって戦争は継続だ。各自、準備を整えよ。」

東部諸国連合の盟主、レザレア王国の総指揮官が命令を出すが、全員冷ややかな視線を向ける。

しかしそれでもこの連合軍の総指揮官である。表立って逆らうことなく、準備に移るのだった。







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