第110話


 リガルを真っすぐに見つめ、地面を蹴りつける。

 【シャドールーラー】で操った剣を振りぬき、リガルへと襲い掛からせる。

 リガルは俺の剣を受け止め、反撃とばかりに俺へと迫ってきたが、【シャドールーラー】の影の先を尖らせて槍のように振りぬく。


 影の一撃は予想外だったのか、リガルの腹を貫いた。

 しかし、それでリガルは後退してすぐにこちらへと近づいてくる。


 【シャドールーラー】で攻撃を仕掛け、リガルの動きを封じていく。

 攻撃のすべては当たらなかったが、誘導には成功した。

 刀が迫るが、それはリガルが自ら放った一撃ではなく、俺の攻撃によって誘導した一撃だ。


 動きは確かにリガルのほうが速いがここまで制限すれば、リガルの攻撃を見切ることはできる。


 俺は持っていた剣で攻撃を受け止めながら、【シャドールーラー】による剣で背中を切りつける。

 リガルが眉間を寄せるようにして、後退する。だが、足を止めさせるつもりはない。

 【シャドールーラー】による追撃を放ちながら、接近する。


 リガルの両目が強く光り、大地を蹴る。

 ……動きがさらに苛烈なものになった。

 お互い、直撃はしないが、かすり傷が増えていく。


 どちらも超攻撃型なのだから、当然だ。

 先に相手を倒せるかどうか。それがすべての状況で、確実に追い込まれているのは……俺だろう。

 リガルの体力、MPはほぼ無制限に見える。


 対して、俺の体力、MPは有限だ。

 この戦いを続けていれば、いずれ追い込まれるのは俺で――動きが鈍り始めた瞬間に、傷が増えていく。


 かすり傷はやがて無視できないほどの痛みになる。

 痛みに気を取られれば、さらに傷が増えていく。

 連撃を、どうにか急所を外して捌いていくが、このままではジリ貧だ。

 

 残りのMPを考えても、このまま戦いを続けるのは難しいと考えた俺は、そこで攻撃へと移る。

 

 刀の一撃をかわしきるのは難しく、左腕を深く斬られる。

 だが、大きなチャンスを生み出すことに成功した。


 最接近したリガルへ、俺は剣を振りぬいた。

 ――捉えた。

 そう思った次の瞬間、リガルは刀を放り出して攻撃をかわした。


「くそっ!」


 そして、次の瞬間、リガルが蹴りを放った。

 かわすことができず、弾き飛ばされる。

 腕の痛みと蹴りの衝撃で、地面をごろごろと転がる俺に、リガルが刀を持って迫ってくる。


「……」


 その両目は、俺をじっと捉え、刀を構えた。


 ……あそこまで追い込んだのに。

 あと、一歩だったのに。


 下手に動いたところで、リガルは俺の動きを超えて攻撃してくるはずだ。


 万事休すだ。

 俺は諦めるように力を抜いてから、リガルを真っすぐに見据え――スキルを放った。

 

 【誘い+】だ。

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