第14話


 現れたゴブリンと向かい合い、攻撃を誘ってから距離を詰める。

 そして、【ブラッドスイング】を放つ。


 振りぬいた一撃が黒い光を放ち、ゴブリンの体に直撃した。

 ゴブリンは吹き飛び、そのまま霧のように消滅した。

 ……さすがに素晴らしい威力だな。


 このスキルが強いことは前世でも知っていた。この時は俺もやれるんじゃないかと思っていたものだ。

 まあ、【根性】がないと敵の攻撃が激しくなるランクの高い迷宮では無理だったけど。


 【ブラッドスイング】はHPを消費するスキルなので、俺は自分のステータスを確認する。


 HPは2から1に減っている。ちなみに、HPを1の時に使ってもスキルは不発に終わる。

 ただ、HPを1でも消費すればスキルとして機能してくれるので、ぶっちゃけかなり効率の良い攻撃スキルだ。


 HP自体は自然回復もしてくれるしな。だいたい一分ほどかかるけど。

 多少効率が良くなったところで、再びゴブリン狩りを行っていった。


 それから休みを挟みながら夕方近くまでゴブリンを狩り続けた俺は、レベル6まで上がった。



 

 帰り道。ゴブリンが二体現れ、俺の行く手を阻んだ。

 もうさっさとギルドに帰りたかったというのに。

 多少の不満があったせいか、多少動きが雑になっていた。


 俺は左腕にゴブリンの棍棒を受けた。


「いってぇ……っ!」


 痛みが左腕に広がる。

 慌てて俺は自分のステータス画面を開いた。

 攻撃をくらったのは初めてだ。そして、先ほどの攻撃ならばまず間違いなくHPは0になるはずだ。

 しかし、しかしだ!


 HPは1になっていた。


 【根性】が、発動した。

 俺の机上の空論は実現した。

 嬉しさがこみ上げてくるが、今は気持ちに身を任せている場合ではない。


 目の前のゴブリンに集中しないとな。

 疲れが出てきたからって、そんなの言い訳にはできない。


 改めてゴブリンへと視線を向け、剣を構える。

 HPが0になっても死ぬということはないが、ステータスの恩恵を受けられなくなってしまうのだ。

 スキルは使えないし、高い身体能力もなくなる。


 Gランク迷宮ならばなんとかなるかもしれないが、高ランクの迷宮でステータスがなければだいたいの人は死んでしまう。

 ゴブリンの攻撃をかわし、まずは一体を確実に仕留めた。

 

 その間にHPも回復し、スキルが使用できるようになった。

 【ブラッドスイング】を放ち、ゴブリンの頭をかちわってやった。


「よし、こんなところか」


 魔石を回収しながら、俺は額に浮かんだ汗を拭った。

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