第13話


 俺は剣を抜き、そちらをじっと睨む。

 壁から現れたのはゴブリンだ。このGランク迷宮は別名ゴブリンの里と呼ばれているそうだ。


 出現する魔物はゴブリンばかりで、ボスモンスターがホブゴブリンだからだそうだ。

 現れたゴブリンも、俺に気づいたようで手に持っていた棍棒を振りあげ威嚇してくる。


 睨み合うこと数秒。ゴブリンが突っ込んできた。

 隙だらけの動きだ。さすがに、Gランクの魔物だな。

 振り下ろされた一撃を、横に滑るようにしてかわす。


 かわしながら隙だらけとなったゴブリンの背中へ、剣を叩きつけた。

 斬った! と思ったけど、あまり傷は深くない。


 やっぱり安物の剣だし、斬るよりは叩くほうがいいかもしれない。

 何度か殴ると、ゴブリンはやがて動かなくなりその体が霧のように消滅した。


 魔力となって再び迷宮に吸収されたんだろう。

 残っているのは魔石が一つだ。魔石は様々な用途があるため、ギルドに持っていけばとりあえる買い取ってもらえる。

 けど、Gランク迷宮の魔物が落とす魔石は質の良くないものがほとんどであるため、高額で取引されることはない。


 多分に漏れず、この魔石の質もあまりよくなさそうだ。

 でも、多少の足しにはなるし、今の俺にとっては貴重だ。

 ……魔石の売買だけで生活費を賄えるのは、Cランク冒険者くらいだ。

 Cランクの迷宮で狩りができるようになれば、迷宮に潜って魔石を回収するだけでも生活できると言われている。

 

 冒険者はなりても多いため、色々と世知辛い。

 年齢による衰えも考慮すると、冒険者として一生生活に困らないのなんて本当に一握りだ。


「さて、頑張るかね」


 いつでも帰れるよう、なるべく入り口から離れないようにして俺はレベル上げを開始した。



 ゴブリンを三体ほど倒したところで、レベルが上がった。

 魔物を倒すと経験値が入るのだが、一人で狩った方がレベルは上がりやすいそうだ。


 レベルが2になったことで、各ステータスが上がり、スキルポイントが1ポイントもらえた。

 これを職業スキルに割り振ることで、一定レベルに到達したときに職業に関連したスキルが獲得できる。


 このスキルポイントは振りなおしができない。

 どれに振るかどうかで今後にかなりの影響が出てくるのだ。


 俺が持っているスキルは三つ。

 【暗黒騎士】【暗黒魔法】【暗黒騎士強化】だ。

 俺は前世に目に穴が空くほどに読んだ暗黒騎士に関するいくつもの本を思い出す。


 まあ、本自体はそれなりに貴重なものだ。そんな外れ職業を手に入れてしまった人がわざわざ本を購入して読めるほどの余裕はないというのが残念な話なんだけど。


 本などの知識から俺は自分のスキル振りについてはある程度考えていた。


 基本は【暗黒騎士】を上げていくのがいいだろう。

 【暗黒騎士】はソロで活動するなら、必須ともいえるスキルが多く手に入る。


 暗黒騎士は攻撃が得意なタンクというのが特徴なため、タンクとして立ち回りたい場合は【暗黒騎士強化】を上げる必要がある。


 ただ、【暗黒騎士強化】はもちろん良いスキルもあるのだが、そればかりを上げても駄目なので難しい。

 【暗黒騎士強化】は、レベル5で一応【誘い】という挑発スキルを獲得できるため、仲間と活動するようになってから上げていけばいいだろう。


 【暗黒魔法】はネクロマンサーのようなスキルを獲得できる。一時的に死霊を召喚し、自分とともに戦ってもらうとかだ。

 こちらも便利なスキルは多いのだが、召喚した死霊はスキルレベルと自身のステータスに比例しての能力になる。最優先で上げるべきスキルではない。


 ひとまずは、すぐに攻撃スキルが手に入る【暗黒騎士】をレベル1にして、新たな攻撃スキル【ブラッドスイング】を獲得した。

 これは、HPを消費して強力な一撃を放つことができるスキルだ。


 早速、ゴブリンに使用してみようか。

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