第22話
「暗黒騎士でも魔物って倒せるんだな」
「暗黒騎士ってクソ雑魚なんだろ? それで倒せるってどんなゴブリンだよ」
「やっぱ、この迷宮は楽勝だな」
ケラケラと笑いの声が聞こえてくる。ミーナの表情がわずかに険しいものとなっていた。
ミーナもこの前成人の儀を受けたばかりであり、ここまで扱われることに思うところがあるようだ。
すでに俺は一度通った身。
こんなことで下手にイソルベたちに目をつけられても面倒だ。どうせ、この依頼の後に続くような関係ではないしな。
「そろそろ行きますか?」
「ああ、そうだな」
俺の提案にイソルベたちもすぐに歩き出した。
「……あの、レウニスさん。あそこまで言われて嫌じゃないの?」
「まあ、あんまりいい気分はしてないけど」
「でも、じゃあどうしてあそこまで好き放題言われたままなの?」
ミーナの純粋な質問に俺は苦笑する。
「別に、ここで喧嘩して何か利点があるわけじゃないだろ。例えば、言い負かしたとして何かあるか? ちょっとした満足感だけだろ?」
「それは……そうだけど」
「下手したらパーティーの空気も悪くなって、迷宮攻略にも支障が出るかもしれない。迷宮攻略ができなかったら俺たちだけの責任でもないわけだしな。別に俺はなんと思われても、自分の目標に突き進むだけだ」
「……」
俺はとにかく強くなるために、面倒事に首を突っ込みたくはなかった。
そんな気持ちとともに歩いていくと、隣にルファンが並んだ。
「……ねえ、レウニスくん。イソルベさんたちは、ちょっとその……リーダーにあまり向いていない気がするんだけど、大丈夫かな?」
「まあ、でもまだ迷宮攻略自体初めてだろうし、仕方ないんじゃないか?」
「でも、それでも事前に職員から指導も受けているはずだろう? 休憩はまったくとらないし、荷物持ち班のことなんてお構いなしに進んでしまうし……第二層でこれだけど、第三層は大丈夫かな?」
確かに、心配な部分ではある。
俺も、一人で第三層に挑戦したことはなかったので、ここから先どの程度通用するか分からない。
「一度挑戦して難しそうなら引き返せばいいんじゃないか? さすがに敵との力の差くらいはできるだろうし」
「……確かに、ね」
今回の依頼は迷宮の寿命が尽きるよりも早い。
仮に失敗して引き返したとしても、なんとかなるという見込みがギルドにはあるはずだし。
俺が知っているところでいうと、ランクの高い冒険者が待機しているとかだ。
そこまでしてでも、俺たちだけ行かせるのはギルド側にも冒険者の教育が業務としてあるからだ。
新人冒険者をきちんと指導するように、と国からの無理難題を押し付けられるため、ギルドというのも大変だ。
ただ、今はクランというシステムも生まれている。
クランとは、冒険者の集まりのようなものだ。パーティーよりも集団としては大きく、所属すれば様々なメリットが受けられる。
先輩冒険者から丁寧に指導を受けられるとか。戦力バランスを考えたパーティー編成をしてもらえるとかだ。
クランと聞けばめちゃくちゃ恩恵がありそうだが、所属している人たちが達成した依頼はクランに収められることになる。クランハウスや、その他もろもろの経費に使われるのだとか。
それに、どれほどのクランといっても、やはり人間関係に難ありの場所もある。
だから、俺はクランに所属するつもりはなかった。
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