第23話


 ……まあ、そもそも暗黒騎士とステータスで足きりされてしまうだろうけどな。


 成人の儀のときがそうだったし。

 成人の儀は、新人をスカウトできる絶好の機会であるため、大手クランのスカウト担当がたくさん来ている。

 

 家系のこともあって、俺に注目してくれていたクランもあったと思うんだけど、暗黒騎士と分かってからはまったく声をかけられなかったな。


「まあ新人の冒険者なんだし、大目に見ていこうじゃないか」

「まあ、そうかもしれないけど……あれ、キミもほとんど新人だよね?」


 ルファンが不思議そうに首をかしげた。

 確かに、さっきの発言は変な誤解を与えてしまうよな。


 この体で迷宮に入るのは初めてだけど、前世では何度も荷物持ちとして参加していたからなぁ……。

 荷物持ちならば、ある程度高ランクの迷宮攻略にも参加できていたので、小遣い稼ぎには悪くなかったものだ。

 そんなことを丁寧に説明しても、頭のおかしな奴と思われるので、濁しておくことにした。


「もともと貴族で教育を受けていたんだ。まあ、ステータスと職業のせいで追放されちゃったけどな」


 自嘲的に微笑むと、隣にいたミーナがずいっと顔を寄せてきた。


「でも、攻略班も苦戦していたゴブリンたちを一撃で仕留めたよね? レウニスさん、凄い強いと思うけど」


 彼女の両目は無邪気な子どものように輝いている。

 ……先ほど守ったのがよほど良く見えたようだ。


「たまたま当たり所がよかったんだよ。とにかく、ゴブリンくらいなら二人を守りながら戦えるからここから先は怯えないでくれ」


 苦笑とともにそう伝え、俺たちは攻略班とともに歩いて行った。



 出現したゴブリンと、攻略班が交戦する。

 第二層……それも第三層が近づいていることもあってか、魔物の出現頻度も増えてきた。


 迷宮に入ってからかなりの時間が経過している。

 途中昼休憩をとったり、水分補給程度はしたりはしていたのだが、さすがに皆の疲労は目に見える形になってきた。


「ああ、クソ! おまえもっと早く倒せよな!」

「うるせぇよ! てめぇが弱いのが悪いんだろ!」

「なんだと!?」


 ……攻略班は疲労もあってか、喧嘩が増えている。

 こういったとき、リーダーが間に入って仲裁するのだが……残念ながら今喧嘩を吹っ掛けたの、イソルベなんだ。

 絶望的な状況だ。


 俺はギルドから支給された中にあった時計で時間を確認する。

 ……午後六時、か。

 この迷宮は昼夜問わず、常に薄暗いため時間の感覚が狂ってきてしまう。


 しかし、もうすぐ夕食にして休んでもいい時間なんだよな。

 イソルベは恐らく、ボスフロアの前あたりまで進んでから休みを挟むつもりだったのかもしれないが、第二層でさすがに苦戦しすぎだ。

 今の状態で第三層に入っても、満足に攻略できないどころか怪我人が出る可能性もある。

 

 もうここで休憩にしてしまってもいいと思うのだが、イソルベは汗を拭いながら歩き出した。

 それに休みの提案をする者はいなく、ヨタヨタと頼りない足取りでついていく。


 さながら、ゾンビを従えるゾンビのようにも見える。


 それに、疲労は攻略班だけではない。

 ルファンとミーナも、明らかに疲労していた。

 ……それもそうだよな。

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