第24話
貴族の時からそれなりに体を鍛え、最近では毎日走り込みをしている俺でもちょっと疲れ始めているんだ。
普段から運動する人間がそう感じるのだから、例えば冒険者になって始めて戦う人たちなんかは、すでに限界が近いはずだ。
ここは、どうにかして休みを取る方向に話を持っていく方がいいよな。
そう思っていた時だった。攻略班の一人が声を上げた。
「おい、イソルベ! もうそろそろ今日の攻略は終わりにしないか!? さすがに疲れてきたぜ!」
おっ、ナイス提案だ。
そのままイソルベが乗ってくれれば、俺が変に頭を使う必要もない。
ワクワクとした気分で見守っていると、イソルベが目を吊り上げる。
その瞬間に駄目だと思ったね。
「ああ? なら、てめぇは置いてくぞ?」
「あぁ? んだよ。おまえどこまで行く気だよ?」
「今日中に迷宮攻略するんだよ」
!?
イソルベの発言に俺は呆れる他ない。
こんな疲労している状態でここのボスモンスターを討伐できるはずがない。
「はああ!? おまえ、頭おかしいんじゃねぇのか!? そんな急ぐ必要ねぇだろ!」
「急ぐ必要あんだよ! 今回の結果次第でオレは大手クランに入れるんだからな! 迷宮攻略を余裕で達成、なんてしたら箔がつくだろ?」
イソルベは楽しそうにアホな計画について語っていた。
それを聞いていた攻略班たちは、顔を見合わせた後、イソルベに近づいた。
「大手、ってどこだよ?」
「『ハンターブロー』だよ」
その名前にどよめきが起こる。
『ハンターブロー』か。俺も聞いたことがある名前だ。
この国にはいくつものクランがあり、各クランは冒険者同様ランクによって評価されている。
数少ないSランク評価を受けているクランの一つが、『ハンターブロー』だ。
「ま、マジで!? あそこって超大手だよな!? 一定以上の職業じゃないと断られるって……」
「そうだぜ。とりあえずオレは職業的には満たしてるからな。あとは、実績さえあればなんだよ。もしも、『ハンターブロー』に入れたら、オレ様がおまえたちのことも口利きしてやるぜ?」
イソルベはすでにクランへの入団が決まったかのような口振りだ。
……大手クランは人柄も評価すると思うので、そう簡単には入れないと思うが。
だが、イソルベの発言に攻略班の皆がやる気に満ち満ちた顔になったのは言うまでもない。
「そ、そういうことなら先に言えよ!」
「そうだぜ! それならオレたちももっと頑張るってんだよ!」
「最初から頑張れよ! そういうわけで、さっさと行くぞ! おい、もたもたすんなよ、荷物持ち!」
イソルベが俺たちを一瞥して声を荒らげた。
仕方なく、といった気持ちで足を前に動かす。
「え、ええ……休めないんだ……」
ミーナが絶望的な声を上げ、ルファンも表情を険しくしていた。
「……ねぇ、レウニスくん。今のまま第三層に入って、大丈夫かな?」
ルファンの問いかけに、首を横に振った。
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