第97話
普通の冒険者ならば、自分の価値を下に見られたと思い、あまり良い思いはしない。
だからこそ、ルーベルクは通常ではありえないような報酬を俺に提示してきたのだろう。
フィンの説得は無理と判断し、俺を説得する方向に持ってきたというわけだ。
俺からすればはした金だ。ぶっちゃけ、断ってもいいが……万が一攻略に失敗したらな。
フィンはどうなろうともいいが、それ以外のすべては失いたくはない。
街はもちろんだし、迷宮から溢れ出てきた魔物たちと戦う冒険者たちだって、無傷とはいかないだろう。
空を飛ぶ魔物がいれば、街へと侵入してきて暴れまわるかもしれない。
フィンのわがままに付き合っているこの時間さえもったいない今、俺は頷いた。
「分かった。俺とオルエッタでそれぞれ百万ゴールド、計二百万ゴールドで荷物持ちを引き受ける」
「……ありがとう。フィン。彼らを追加の荷物持ちとして同行させ、すぐに攻略に向かってほしい」
「……ッ。そこまでして、そのハズレ職を同行させるんですか? あたしたちのチームの信頼……ないんですか!?」
「信頼はしているよ」
「なのに、よその変な奴を同行させるんですか!?」
「迷宮爆発が発生してしまえば、その時点で『ハンターブロー』の沽券に関わる。今キミは、その重要な任務を任されている。その自覚を持ってほしい」
ルーベルクからすれば、フィンに心配はあれど今すぐに用意できる中での最高戦力だと思っているからこそ、今回の迷宮攻略のリーダーを任せるんだろうしな。
ルーベルクのそんな気持ちが多少は伝わったのか、フィンの表情は少しだけ落ち着いたものになる。
「それに、キミはレウニスくんの力を見くびりすぎだ。彼の実力は、本物だ。助けられることもあるはずだ」
……ただ、ルーベルクの最後の言葉でまた不機嫌そうなものになる。
どうやらフィンは、色々な人に認められたいタイプなんだろう。
ラーナさんやルーベルク。そんな認めてほしい人たちが自分よりも俺を評価していると思って、モヤモヤしているんだろう。
別に、俺のほうが評価されているってことでもないと思うがな。
「……分かりました。レウニスと、オルエッタ、ね。二人とも、ついて来なさい」
フィンは鋭い眼光とともに部屋の外へと向かう。
彼女の仲間たちはぺこぺこと頭を下げてから、その後を追い、俺たちも後を追う。
「……レウニスくん。フィンは猪突猛進なところがあるんだ。チームに危険が及びそうな場合は、力づくで止めてもいいからね」
「了解」
……なんで、子守のようなことまでお願いされているんだろうな。
百万ゴールド以上の請求をしてやりたい気分だったが、引き受けてしまった以上は仕方ない。
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