第98話



「オルエッタ、行くか」

「はいっ、久しぶりの荷物持ちですね! 街の平和のためにも……そして、初めての『仮面の英雄』としての活動……頑張りましょう!」


 ぐっと拳を固めるオルエッタは、荷物持ちとして扱われることに対してはどうでもよさそうだな。

 そういうの、気にする仲間じゃなくて良かったよ。



 迷宮に入る前ではルーベルクたちも同行するため、今回の攻略の流れを教えてもらう。


 基本的に迷宮攻略を行っていくのは、フィンたちのチームだ。

 フィンをリーダーとした女性四人組であるが、皆まだ二十にもいかない若手たちで編成されている。


 容姿と実力含めた総合的な面で人気があり、今は街のアイドルのようになっているのだとか。


 ルーベルクが参考程度に渡してきた新聞の記事には、確かに戦うアイドル爆誕!? なんて書いてある。

 アイドル、ねぇ。


 男性にしろ、女性にしろ。最近の冒険者は戦うだけが仕事じゃない場合もある。


 ラグロフも若干アイドルっぽい推され方をしていないでもないが、本人が断固として拒否しているだろう。


「……フィンは多少熱くなるところはあるんだけど、まさかここまで敵意むき出しなのは初めてなんだよね。……レウニスくん、何かしたの?」


 何かした、と問われてもな。

 やはり、ラーナさんの件くらいだろう。


「ラーナ、という冒険者に迷宮の代表者のようなものをしてもらっていたんだ。だが、どうにもラーナさんのことを慕っているフィンには、俺がラーナさんをこき使っているように見えたらしくて、それが気にくわなかったんじゃないかと思う」

「ラーナさんか……。確かに、フィンは色々お世話になったんだよね」


 ルーベルクもラーナさんのことは知っているようだ。

 懐かしむような表情で、苦笑している。


「そうなのか? 『ハンターブロー』がラーナさんに新人教育をお願いしたのか?」

「いや、実はちょっと違うんだよね。フィンはもともと野良で活動していて、ラーナさんに面倒を見てもらっていたみたいなんだよ。ただ、そのときの指導が良かったのか、ステータスがちょうど成長期に入っていたのかは分からないけど、そこから一気にステータスが成長してね。そこで、『ハンターブロー』にスカウトしたんだ」


 なるほどな。

 だから、余計にフィンはラーナさんを慕っていて、俺に対しての敵意が増したのかもしれない。

 

 とはいえ、別に俺はラーナさんに何か酷いことをしているわけでもないんだし、完全な誤解なんだから、理解してもらいたところだ。


 前を歩くフィンの後姿を見ていると、向こうがちらとこちらを見て、目を吊り上げる。

 ため息とともに視線を外しながら、俺はパーティーメンバーを確認する。


 今回のパーティーは合計八人。

 まずは、フィンたち戦闘を行う四人。

 そして、俺たち二人と荷物持ちがさらに二人だ。


 ルーベルクの感覚では、俺とオルエッタは戦闘を行う四人側という認識なんだろうけどな。

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