第99話
荷物持ちの子たちもCランク冒険者だそうだ。
今回出現したBランク迷宮ならば、自衛くらいは問題なくできるだろう。
それなりの人材を用意したのは確かだ。
まだ迷宮内の情報は何も分かっていないそうだが、荷物持ちの子が迷宮内の地理を把握するスキルを所有しているため、攻略自体はそこまで時間はかからないだろう。
それにしても、街の外はいつでも魔物に対抗できるように守りが固められている。
外にはたくさんの冒険者たちが待機しており、土属性魔法による簡易的な壁もある。
迷宮が目前へと迫ったところで、近くに魔物たちの気配を感じた。
「……」
魔物たちはこちらをじっと観察し、それから立ち去るように離れていった。
「なんだ襲ってこないんだな」
「……そうなんだ。あの迷宮が現れてから周囲の魔物たちの様子が変化してね。まるで観察するようにこちらを見てきて、何もしないで立ち去っていくんだ」
「それは、不気味だな。今までもこんなことってあったのか?」
「いや……ないんだ。まるであの迷宮に魔物たちが操られているかのようにも思えて……一刻も早く攻略したほうがいいかもしれないね」
迷宮が魔物を操る、か。
確かに、力を持つ魔物が魔物たちを従えるということはなくもないが、まさか迷宮がその役割を担うか?
前世の知識で考えてみても納得できる答えは見つからなかった。
「ここが、今回の迷宮だね」
迷宮は街から見える位置にあったため、到着はすぐだった。
迷宮前にて俺たちは足を止めて、その様子を確認する。
別段、おかしな部分はない。至って普通の迷宮だ。
ただ、迷宮の消滅までの時間はあまりない。
「それじゃあ、すぐ行くわよ。あんたたち、遅れないようにね」
フィンがそう言って真っ先に一人迷宮へと踏みこむ。
俺たちも遅れて中へと進もうとした、その瞬間だった。
迷宮の入り口が、一気に縮んでいく。
それはまるで、人間が口を閉じるかのような動きで――。
「封陣迷宮だ!」
真っ先に叫んだ俺だったが、突然の出来事に皆が硬直していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます