第96話
食事が終わりしだい、クランハウスを出た。
そこで、ようやく異常事態であることに気付いた。
街のあちこちで、迷宮爆発を恐れる声が漏れていた。
冒険者はもちろん、一般人の中には避難を始める人たちもいるほどだった。
まだ街へと魔物が襲ってきている様子はないようだが、いつその状況になるかは分からない。
そんな環境で不安を感じるなというほうが無理な話だよな。
一刻も早く解決しないといけないだろう。
『ハンターブロー』の支部へとついた俺たちは、言われた通りに中へと通してもらう。
案内されたのは最上階、最奥の部屋。
俺たちを案内してくれた受付が、扉を開けると、机に両肘をつき、険しい表情を浮かべるルーベルクの姿があった。
「良かった、レウニスくん。時間通り来てくれたね」
「当たり前だろ……それで、そっちの人たちが……今回の迷宮攻略に当たる人、だよな?」
違っていて欲しいという気持ちで、俺はルーベルクに問いかける。
相手の子も信じられない、といった目でルーベルクと俺に何度も視線を向けている。
「ちょ、ちょっと! ルーベルクさん! こいつの職業とか知ってるんですか!? クソ雑魚ですよ!?」
「……フィン? 意外だね。レウニスくんのこと知っていたのか?」
ルーベルクが言う通り、そこにいたのは……初めての迷宮の競売の際に喧嘩を吹っ掛けてきた女性……フィンだ。
どうにもラーナさんに信頼を寄せているのか、ラーナさんを無意味に連れまわす俺が気に食わないという様子だったんだよな。
そういえば、フィンも『ハンターブロー』の一員だったか、
フィンの後ろには以前競売に参加していた三人の姿もある。申し訳なさそうにぺこぺこと頭を下げている様子を見るに、この前のときから悪い印象は受けない。
本当に、こいつだけなんだよな。
フィンは俺の前までやってきて、目を吊り上げる。
「あんた、今すぐ帰りなさい。これからあたしたちは、重要な任務に当たるのよ。あんたなんかいても、足手まといにしかならないわ」
「そうか。ルーベルク、それなら俺は必要ないか?」
「……ちょっと待ってね、レウニスくん。フィン。今回の迷宮攻略は何が起こるか分からない。まだ十分に迷宮攻略の経験がないキミたちだけに任せるわけにはいかないんだ」
「……ルーベルクさんっ。あたしたちは確かに経験は少ないですけど、一回だけ攻略はしています! ていうか、そもそも、あたしたちはそいつに邪魔されなければもう一回攻略できていました!! ほんとっ、ハズレ職のくせに、邪魔しないで欲しいわ!」
「……そこで、知り合ったということか」
ルーベルクは合点がいった、という様子で額に手をやる。
それから、ちらとこちらを見てくる。
「……レウニスくん。……今回の攻略報酬で百万ゴールドを支払う。……彼女らの荷物持ちとして同行してもらってもいいかい?」
荷物持ち。
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