第43話
第三層に入る前に夕方となったので、今日はそこで仮眠をとることになった。
すぐに仮眠の準備を整え、順番に体を休めた後で最奥を目指して進む。
仮眠の際も、荷物持ちたちで担当するだけではなく、しっかりと攻略班の人も見張りをしてくれた。
勝手を知っている冒険者パーティーだと、ここまでラクに攻略が進められるんだな。
最奥に到着したところで、俺たちは一度休憩を挟んだあと、ボスモンスターの攻略へと向かう。
と、言っても俺たち荷物持ちがやることは別にない。
攻略班の七人が中央を目指して歩いていく。すると、空間から魔物が出現する。
ウルフリーダーだ。
大柄なウルフはこちらに気づくと咆哮を上げ、威嚇する。
その間に、ベヨングは指示を飛ばしていく。
陣形が出来上がった。タンクが前に立つと、盾の先を地面に叩きつけるようにして、スキルを発動する。
タンクのスキルによって、ウルフリーダーの注意は彼へと集中する。
ウルフリーダーが飛びかかってきて、戦闘が開始する。
「ガウ!」
ウルフリーダーが叫び、タンクへと突っ込んでいく。
しかし、タンクはその一撃を正面から受け止め、跳ね返した。
さすがのパワーだな。
タンクの体は淡い光に包まれていて、おそらくはベヨングの強化スキルが発動しているのだろう。
戦いは、タンクを中心に、ベヨングたち有利で進んでいく。
……見ていて勉強になるほどに見事な連携だ。
俺もいずれはソロではなく誰かと組んで行動することもあるだろう。というか、将来的に訪れる危機に対して、俺一人で対応しきれるとも思っていない。
仲間との連携については、実際に行ったことはないため、こういった場面で勉強させてもらうしかない。
観察するように見ていると、隣にいたオルエッタが目を輝かせた。
「凄いですね。皆さん、本当にとてもお強いです」
「確かに、そうだな」
前回、俺が必死に一人で戦っていたのとは、雲泥の差だ。
チームで立ち回れると、迷宮のボスだろうがここまで余裕で戦えるんだな。
戦いは終始ベヨングたちのペースで進んでいく。
ウルフの体力が減ってきた時、咆哮を上げて攻撃速度を上げたのだが……それさえもベヨングたちは読み切って、無理なく対応した。
ウルフリーダーへのトドメは、ベヨングの土魔法だ。地面から這い出た土は、槍のような形をしてウルフリーダーの腹を突き破った。
「よし、皆無事ですか!?」
ベヨングが声を張り上げ、パーティーメンバーを、そして俺たちへと視線を向けてきた。
もちろん、俺たちはただ見ていただけなのですぐに頷いて返すと、彼はほっとしたように息を吐く。
それから、柔らかな微笑を浮かべ、装備していた剣をしまった。
しかし、その表情が僅かに険しい。彼の視線はある方角へと向けられていて、俺もつられるようにそちらを見た。
「……通路が、ありますね」
ベヨングが口にした通り、そちらには通路があった。
俺たちは一度顔を見合わせた後、そちらへと向かう。
ボスフロアには木々があって、その陰に隠れるように通路があった。
ずんずんと俺たちが進んでいくと、ベヨングが制止するように腕を上げた。
「……ここは、二段階迷宮ですね」
「……確かに、そうみたいだな」
これは、厄介だ。
普通の迷宮ならばボスモンスターを倒せば攻略完了だが、ここは違う。
簡単に言えば、迷宮の中に迷宮があるのだ。
つまり、この先に行ってそちらの迷宮も攻略する必要があるというわけだ。
だが、そちらについての情報は、ギルドからは教えられていない。
ギルドが認知していない迷宮というわけで、難易度も分かっていないのだ。
「もしかしたら、ギルドの懸念はこのことだったのかもしれませんね」
「行くのか?」
「念のため、少し調べてみましょう。攻略できそうなら、攻略を続行しますし、無理であれば調べた情報を買い取ってもらえますしね」
ベヨングはにこりと微笑んだ後、表情を引き締めて前へと進む。
俺も、僅かに感じた表現できない感覚を胸に押し込め、彼らの後を歩いていった。
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