第20話



「あ、ありえないと思います。ただ、オルエッタさんはステータスだけで見ればDランクの判定を受けています。ですから、オルエッタさんを上手く使えば、戦えるのかもしれません」

「……先日、【流れ星】と【劣勢強化・速度】【劣勢強化・力】を購入したのですが、それが何か関係していると思いますか?」

「……【劣勢強化・力】などは、少ないHPを維持できれば強いですが、確かあれって一定のHP以下で発動でしたっけ……? 狙ってその数値に調整するのは難しいと思いますが」

「そう、ですね」


 仮に調整しても、HPは周囲の魔力を取り込むことで自動で回復していってしまう。

 一時的に強化することはできても、ドロップアイテムを大量に獲得できるほどの魔物と戦う余裕はないだろう。

 私はレウニスさんとオルエッタさんの成人の儀の際のステータスを見て、レウニスさんのHPに気付いた。

 ……HP2。

 限界値となってしまっているということは、どれだけ成長してもHPは2のまま。

 HP2であれば――

 

「レウニスさんのステータスであれば、【劣勢強化】系のスキルも発動する可能性はありますよね?」

「そ、そうですね……。それが重複して発動するのなら、レウニスさんにとってはとても強力なスキルになっている可能性はありますね」


 部下の発言に、私も頷く。

 レウニスさんが、自分のステータスを理解し、自分が冒険者として活躍するためにそれらのスキルを獲得しているとすれば、非常に賢い人だろうと思う。


 元々、貴族の家の出身だ。

 きっと、冒険者として活躍するための努力を重ねてきたのだろう。

 無駄のない行動力は、とても素晴らしく、私は尊敬の気持ちを抱いた。

 ……と、なればレウニスさんが求めてきた【流れ星】のスキルにも何かあるのかもしれない。

 レウニスさんに関係するのだろうか? それとも、オルエッタさんのほうだろうか?

 昨日の今日で大量のドロップ品を持ってきたということは……


「【流れ星】に、アイテムのドロップ率を強化する効果があるのでしょうか?」

「ど、どうでしょうか? そちらは調べてみないとわかりませんが。仮にそうだとして、レウニスさんはどうして知ったのでしょうか?」


 部下の疑問は当然だけど、理由なんていくらでもあるものだ。

 この世に全貌が明らかにされていない職業はいくらでもある。そして、それらの職業の正確な能力を把握するには二つの方法がある。


 自分でレベルを上げ、検証することと、神のお告げを受けるということだ。

 前者はともかく、後者については私はあまり信じてはいないが、そういうのがあるらしい。


 例えば、「夢でこうやってスキルを割り振ったほうがいい」と言われ、実際そう割り振ってから職業の真の力に気づいたなんて話も聞いたことがある。


 レウニスさんが、たまたま【流れ星】の効果をどこかで知った、なんて可能性はあり得ない話でもない。


「分かりません。ですが、調べてみる価値はありそうです。あとで、手の空いている者にそちらはお願いするとして……引き続き、レウニスさんとオルエッタさんの調査もお願いします」

「は、はい。分かりました!」


 私の指示を受けた調査員は、びしっと敬礼をしてから部屋を出ていった。

 ……レウニスさんとオルエッタさんは、何かある。

 もしも、二人の才能が優れたものならば、クランへのスカウトも必要になるだろう。


 できれば、周りのクランが声をかける前に。

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