第86話


 

「分かりました。ありがとうございます!」

「ええ、他にも何か気になることがあれば言ってくださいね」


 ギルド職員は笑顔とともに頷いてくれた。

 私は受付から離れ、言われた場所に向かって持ってきた募集の紙を貼った。

 ……うん、お姉ちゃんの絵のおかげもあって、他の募集にも負けないインパクトがある。


 きっとお姉ちゃんが化け物みたいなうさぎを書いたのも、印象づけるためなんだと思う。


 これなら、また入団希望者も来てくれるはずだ。

 私が募集版を眺めて満足していると、


「お姉ちゃん、『仮面の英雄』の人なのかい?」


 振り返ると、三十歳くらいの男性が三人ほど、笑顔とともに近づいてきた。


「はい、そうなんですよ!」

「へぇ……俺たち、『仮面の英雄』には前から興味があってさぁ」

「えっ、本当ですか!?」


 早速の入団希望者に、私は前向きな気持ちとともに向かい合った。


「ちょっと近くのお店で話を聞かせてもらってもいいか?」


 男性たちは私をじっと見てから、一際笑みを強くした。


「本当ですか!? いいですよっ、いくらでもお話しますね!」

「おう。それじゃあオレたち行きつけの店まで行こうぜ」


 男性たちが顔を見合わせ、にやりと笑った。

 ……この人たちが興味を持ってくれれば、お姉ちゃんもきっと喜んでくれるはず。

 私はそんな気持ちとともに、彼らとともに店へと向かった。




 私が彼らとともに向かった建物は特に看板などはない場所だった。


「ここにお店があるんですか?」

「ああ、まあな」


 にやりと笑みを浮かべた彼らについていき、部屋へと案内される。

 中は暗い雰囲気のお店だった。


 バーって感じかな? 居酒屋よりは落ち着いた雰囲気があって、何人かお客さんも座っていた。


「ここは紹介制のバーでな。一部の人しか入れないんだ」

「そうなんですね……私、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だよ」


 にこりと男性たちが笑みを浮かべ、私たちは椅子に座った。

 四人掛けの席で、私が一番奥に座り、彼らが囲むように座ってきた。

 出されたお水にとりあえず口をつけてから、深呼吸。

 ちょっと緊張する。

 でも、せっかく興味を持ってくれた人たちなんだし、好印象を与えられるように頑張らないと!


「ど、どうですか!? 『仮面の英雄』に入ってみませんか!?」


 どのように誘えばいいのか分からず、私は思うことをそのまま口にした。

 しかし彼らの表情はどこか考えるようなものだ。

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