第85話



 ギルドに到着してから、私は依頼に関する受付へと向かった。

 列に並びながら、ちらちらと視線をさまよわせてみたけど、レウニスさんは来ていないようだった。


 って、いけないいけない。今はクランのことに集中しないと。

 すぐ私の番になって、ギルド職員さんの前に向かう。


「あの、『仮面の英雄』のクランに来ていた依頼を達成したので……こちら、です」


 私はいまいち要領が分からなかったので、依頼書と回収するはずの部位と魔石をギルド職員へと渡した。

 ギルド職員は欠けた角を見て苦笑を浮かべ、私は謝罪の言葉を口にする。


「ご、ごめんなさい。攻撃したときにうっかり破壊しちゃって……」

「そうみたいですね。一応、シルバーウルフの角、であることは確認できますが、こちら破損しないように持ってきた頂けると助かります」

「は、はいごめんなさい……」

「いえ、今後気を付けていただければ大丈夫ですから」


 どうしよう。

 依頼自体の目的は魔物の討伐と素材の回収だ。

 これだと、クランの評価に響いちゃうかもしれない。

 しばらくギルド職員は素材を確認し、それから口を開いた。


「こちら、確かに確認できました。ありがとうございます」

「はい……こちらこそ、次から気をつけます……」


 ひとまず、依頼自体は達成できたけど……けど、きっと満点評価ではないはずだ……。

 せっかく、お姉ちゃんの代わりに受けてきたのに、クランに泥を塗ってしまった。


「そんなに気にしないでください。もしかして、新しくクランに入った方ですか?」

「新しく……といいますか、お姉ちゃんの妹のオルエッタです。ちょっとお姉ちゃんが体調を崩しちゃって、私がお手伝いしてるんです」

「……そうですか。フィール様は体調を崩されてしまっているんですね……確かに、色々ありましたしね」


 色々、というのはたぶん入団した冒険者が問題を起こしたことなんだと思う。

 お姉ちゃんは入団者を、人柄で選んでいるとは言っていたけど、その問題を起こした人たちは実力こそあったけど、人格に難があったみたい。


 でも、クランを一つ上のランクに上げるために、仕方なく入団させて……案の定問題を起こされてしまった、とお姉ちゃんは言っていた。

 焦ってしまった結果、すべてを失いそうだと自嘲気味に笑っていたけど、仕方ないことだと思う。

 お姉ちゃんが何とかクランを維持するためにしたことに、文句なんてつけられないよ。


「あ、あの……それで今クランの入団者を探しているので、募集の張り紙を持ってきたんですけど、貼らせてもらえるんですか?」

「あっ、はい。申請も出ているので問題ありませんよ。あちらの依頼書の横にスペースがありますよね? あちらに貼ってください」


 ちらと視線を向けると、確かに同じような張り紙がいくつもあった。

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