第84話



「たまにちょっと戦いに参加してたけど、いつもレウニスさんが倒していたんですよね」

「レウニスさんっていうのが、パーティーリーダーの方? ……その人って男の人?」

「うん、そうだけど……どうしたの?」


 心配そうにこちらを見てくるお姉ちゃん。

 何かあったのかな?


「変な要求とかされていないわよね?」

「変な要求ってなに?」

「そ、それはその……オルエッタの職業はあまり人気ないのにわざわざオルエッタを連れていくなんて……何かあるのかと思って……。ま、まあ何も嫌なことはされてないのね?」

「うん。色々助けてもらって、親切にしてもらったんだ」


 占い師は本当は凄い職業なんだけど、それをお姉ちゃんにうまく伝えることは……できそうにない。

 あとで、まとまったら話してみようかな。


「……それなら、いいわ。あなたを一人にするのだけは、本当に不安だったのよ」


 ほっとしたように息を吐く。

 それは、私のセリフでもある。……お姉ちゃん、すぐに無茶しちゃうから。

 その結果が今なんだしね。


「それと……まあ、一応これをギルドに張ってきてもらって」


 お姉ちゃんから渡されたのは、クランメンバー募集の張り紙だ。

 中央には、不思議な魔物の絵もあって、私は首を傾げた。


「お姉ちゃん。この化け物はなに?」

「ば、化け物じゃないわ。……う、うさぎよ。……可愛い絵を」

「あっ、うさぎなんだ! 魔物かと思ったよ」

「……ああ、もう! いいから、ほらお願い、ね? 一応、ギルドには話を通してあるから、ギルド職員の人に話を聞いてちょうだい」

「分かった! 行ってくるね!」

「……ええ、行ってらっしゃい」


 お姉ちゃんが僅かに頬を緩めて手を振ってくる。

 戻ってきてから、初めてお姉ちゃんの笑顔を見た気がする。

 お姉ちゃんと再会すると、やっぱりずっといたいなって思う気持ちもある。


 街の外に出て、私は地図を見る。

 いつもは全部レウニスさんがやってくれたんだよね。

 何か疑問があれば、質問して、全部教えてくれた。


「……一人、なんだ」


 ぽつりと声に出して、それをより強く実感する。

 顔を上げるとそこにレウニスさんがいるような気がするけど……周りには誰もいない。

 今はブールさんたちもいないから、余計に静かに感じてしまう。


 ……でも、今は一人で何とかしないと。

 私は頬を叩き、気合を入れて目的の魔物を探した。


 魔物の発見自体には時間がかかったけど、討伐は一撃で済んだんだけど。


「……どうしよう。おもいっきり角を潰しちゃった……」


 私は、依頼であった回収部位である角をハンマーの衝撃で破壊してしまっていた。

 半分ほどかけてしまっている角だけど……これを持ち帰るしかないよね……。

 大丈夫、かな。


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