第45話


 最初期のクラン名は『仮面』だったらしいが、リーダーから引き継がれたところで、『仮面の英雄』に名前を変えたそうだ。

 今頃、仮面はあの世で恥ずかしい思いをしているかもしれないな。


「仮面の英雄ねぇ。オルエッタはどうなんだ?」

「もちろん、私の目標の一つでもありますよ!」


 胸をとんと叩いたオルエッタに、ラーナさんが苦笑する。


「二人とも、大きな夢だね。私には眩しすぎて失明しちゃいそうだよ」


 茶化すように目元を抑えていたラーナさんに、オルエッタがぶんぶんと首を横に振った。


「そ、そんなことありませんよ! ラーナさんも、何か立派な夢を持って冒険者になったんじゃないですか!?」


 オルエッタはわりと繊細なところにもぐいぐいと突っ込んでいくな……。

 ラーナさんはオルエッタの言葉に、ふっと力の抜けた笑みを返す。


「私は……。私も……二人みたいに強くて凄い冒険者になりたい! みたいな夢はあったんだけど……なかなか大変でねぇ。もうこの歳になると辛くて辛くて……よよよーって感じかな」


 ラーナさんはなるべく暗くならないよう、ギャグを挟みながらそういったのだが、オルエッタはそこで遅れて気付いたようで、申し訳なさそうに頭を下げた。


「あっ、……そ、そのごめんなさい!」

「いいよいいよ。もう気にしてないからね。気遣わせちゃってごめんごめん。今はまあ……未来ある若者が育っていくのを見るのも楽しみの一つだから。これも、紛れもない本心で……だから、二人とも、有名な冒険者になって自慢させてね」


 冗談めかしていったラーナさんに、オルエッタは大きく頷いた。


「は、はい! もちろんです! ね、レウニスさん!」

「……そうだな」


 俺も控えめながらに頷いてから、立ちあがる。

 休憩はもう十分とったので、あとはボスを仕留めるだけだ。


「それじゃあ、私たちはここで待機、でいいのかな?」

「ああ。俺たちでさっさと倒してくるから、帰る準備だけしておいてくれ」

「了解。怪我しないようにね」


 ラーナさんにこくりと頷いてから、俺たちはボスフロアへと進んでいった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る