第70話
すぐに決闘を開始しようとした兄に対して、俺は待ったをかける。
「いや。きちんと契約書を書いてもらう。スキルを使用した、契約書だ。そのスキルを使える人間もいるだろ?」
「……ったく、面倒だな。まあ、確かに……決闘した後で逃げられても困るしなぁ」
兄はにやりと笑い、それから執事に命令して、男を呼びつけた。
屋敷にはだいたい文書を作るための人間を置くもので、このユシー家でもそれは変わらない。
速やかに契約書を書いてもらい、俺はその内容を読んでいく。
俺が勝った場合は、決闘時に兄が身に着けていた装備とスキルをもらう。また、俺に対して不必要に関わらない。
兄が勝った場合は、先ほど父が言った内容のことを遂行する。
俺たちはお互いにMPを指先に集め、契約書の名前の部分に当てる。
MPによって拇印のようなものになり、俺たちの契約が結ばれた。
これによっていわゆる、奴隷の首輪と同じような効果を持つ。
奴隷の首輪は半永続的に、効果を発揮するがこの契約書はあくまで書かれている内容を遂行するまでだ。
もしも、契約を反故するような行動を行えば、死ぬほどの痛みに襲われる。そのまま、無視を続ければ本当に死ぬ。
この契約書は、それだけ恐ろしい効果を発揮するため、拇印を押す場合は良く読む必要がある。
オルエッタとか、気楽に押してしまいそうなので本当に心配だ。
拇印を押し終えたところで、兄は大きな声で笑いだした。
それは兄だけではなく父もだった。
「はっ、ははは! 暗黒騎士で、HP2のおまえが本気で決闘を認めるなんてな!」
「く、はははっ……! 自分の立場を理解できていないようだな……っ。バルーダ! 殺さない程度に遊んでやれ」
「ああ、分かってるよ父さん。さあ、レウニス。さっさと決着つけに行こうぜ?」
楽しそうに笑っている二人に、俺も気付かれない程度に笑みを返す。
……どっちが、立場を理解できていないか。教えてやろうじゃないか。
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