第70話


 黒い人影が浮かび上がり、その数は五人。

 鞄は一人に持ってもらい、残りの四人には周囲の警戒に当たってもらう。


「わっ、レウニスさんが一杯ですね。でも一度に大量に出すとMPの消費量が激しいんですよね?」

「そうだけど、今は金があるからな。MP回復ポーションで補える」

「なるほどぉ……つまり、分身さんたちがうまく使えれば、ブールさんたちは必要ないってことですか?」

「まあな」


 ブールたちが必要だったのは荷物持ちとして。

 ラーナさんが必要だったのは、迷宮の攻略権が落札のため。


 しかし、ブールたちは【シャドーアバター】で補えるし、ラーナさんに関しても、俺の評価がかなり上がったため、もう問題ない。

 評価が上がっているのは、ラーナさんが俺の攻略状況を伝えてくれているおかげでもある。


 【シャドーアバター】は五人程度なら、そこまでMPの消費が激しいわけでもない。

 十分程度は維持できるだろう。それに、普段は五人も用意するつもりはない。精々、三人程度だ。


 五人のうち四人には戦闘を行ってもらうため、先行して進んでもらう。

 【シャドーアバター】たちの動きに合わせ、Bランク迷宮から魔物が出現した。

 出現した魔物はゴブリンだ。しかし、普通のものよりも顔に傷が多く、筋骨隆々である。


 さすがに、低ランク迷宮のものとは実力が違うだろう。

 出現したゴブリンの数は四体。

 それぞれ、【シャドーアバター】が向かい合い、戦闘を行っていく。

 ゴブリンたちの連携はそれなりにできていたが、それ以上に【シャドーアバター】たちのほうが動けている。


 彼らは俺の分身だ。俺の持っているスキルなら、何でも使用可能だ。

 次々に【ブラッドスイング】などを使い、【オートヒール】を発動させていく彼らは、かなり贅沢な戦い方をしてくれるが、それぞれさくっとゴブリンたちを仕留めていった。


「あの、レウニスさん。私たち……とても暇です!」

「道中は移動のために体力を温存したいだろ? このくらいでいいんじゃないか?」


 【シャドーアバター】たちは確かに強いが、魔力補正ありの現在でゴブリンたちより少し強いくらいだ。

 Aランク迷宮の雑魚モンスターと互角くらいだろうか? どちらにせよ、Bランク迷宮のボスモンスター相手ではさすがに厳しいだろう。


「うーん、確かにそうですね。では、私は出現した魔物たちに【女帝の威光】を使用していきますね」

「了解。さっさと先に進もう」


 俺は荷物持ちの分身に命令を出し、彼にドロップ品の回収をしていってもらう。

 そうして、【シャドーアバター】たちによる攻略を進めていく。


 俺のやることはMP管理のみだ。

 戦闘が終わったときにMPが大きく減っていれば、全快するようにMP回復ポーションを手にかける。


 そうしてどんどん進んでいくが、まったくもって問題ないな。

 確かにMPの消費はえぐいが、それは戦闘まですべて任せているからだ。


 敵が強い場合は、荷物持ち用の分身だけ作って俺やオルエッタが戦えばいい。

 これなら、もうブールたちは必要ないだろう。

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