第69話
「いただきます!」
……緊張感のない奴だな。
まあ、異常な自体の前にがたがた震えられるよりはよっぽどいいか。
オルエッタにおにぎりを渡してから、俺は持ってきていたライトと呼ばれる魔道具にMPを注ぎ、道の先を照らす。
これで明かりの問題はないのだが、魔物からすれば格好の的になる。
さっさと迷宮まで移動してしまおう。
渡された地図を頼りに進み、何度か魔物との戦闘を行う。
……Cランク程度の実力はあるのではないだろうか? 苦戦はしないが、だからといって気を抜けば致命傷になりかねない相手だ。
「この魔物たちって迷宮から出てきてしまったのでしょうか?」
おにぎりを口に運びながら、ハンマーで魔物の頭を潰すオルエッタ。
……血の臭いとか気にしないのな。
「迷宮爆発は起きていないみたいだし、たぶんだが元々住んでいる魔物が強化されたんじゃないか?」
「なるほどぉ……かなり手ごわいですよね」
オルエッタの言う通り、Cランク迷宮の魔物くらいはありそうだ。
さっさと迷宮攻略をしたいが、魔物が村を襲うと、シェイナ村の戦力では少し不安だな。
ラーナさんがいるし、数が多すぎなければ何とかなりそうではあるが。
見える範囲で魔物を狩りながら進んでいくと、迷宮が見えてきた。
今までの迷宮と変わらない小山のような入口なのだが、夜になるとおどろおどろしい雰囲気があった。
「……なんだか、迷宮からこう……強い力というか、MP的なものを感じませんか?」
「……そうだな。でも、ここはBランク迷宮だし、封陣迷宮化はしていないだろうけどな」
「封陣迷宮……ですか?」
オルエッタが首を傾げている。
冒険者なのに知らないのか……とも思ったが、封陣迷宮の特性上、今は知らなくても困ることはないよな。
「封陣迷宮ってのは、一定人数が中に入ると入口が閉じられる迷宮だ。まるで、封印されたかのような迷宮だから、封陣迷宮って呼ばれてるらしい」
「ええ!? それって外に出られないってことですよね!? 食事とかどうするんですか!?」
心配はそこかい。
「安心しろ。迷宮が攻略されれば、入口は開く。……あとは、中にはいった人が全員死ねば開くな」
「ということは……攻略か全滅かの二択だけなんですね……それじゃあ、ここがもしも封陣迷宮でも、攻略するからどっちみち問題ないですよね?」
「そうだな。……それに、Aランク以上の迷宮じゃないと封陣迷宮になる可能性はないらしいからな。Bランクのここなら気にしなくてもいいはずだ」
「なるほどぉ……それなら安心ですね!」
どちらにしろ、攻略予定の迷宮なのでどんな迷宮だろうと関係はない。
「中に入るぞ」
「分かりました!」
オルエッタが元気よく返事をしてきて、迷宮内へと下りていった。
迷宮内へと下りていき、たどり着いたのは平原のような開けた空間だ。
おまけに、中は昼間のように明るい。外との違いに脳がおかしくなるほどではあったが、問題はない。
この迷宮は特に変な造りはしていないため、迷子になることはないだろう。
内部の地図もギルド出発時にもらっていたため、俺はそれを広げる。
目的の方角を見定めた後、俺はスキルの発動準備のためにスキルストーンの入れ替えを行う。
「あれ、まだ行かないんですか?」
「今回は、ちょっとした試験の意味もあるんだよ」
「試験ですか?」
「ああ。今後、ブールたちが必要かどうかの判断のためのな」
「でも、ブールさんたちがいないと荷物を持てないですよね?」
「そうでもないんだよ、これがな」
スキルの入れ替えは、【劣勢強化・魔力】を二つセットするというものだ。
これによって、俺の魔力が2,25倍になり、それから【シャドーアバター】を発動する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます