第68話
今回の迷宮攻略はちょっとした実験のつもりで、それが成功したら、これからは俺とオルエッタの二人で攻略するつもりだった。
ラーナさんが去っていったあと、振り返ると眠そうな顔のまま服を脱ぎ始めたオルエッタがいた。
……まったく、こいつは。
ため息を吐いてから、俺は自分の着替えをもって外へと出た。
「本当にいいの? 別に一人くらい連れて行っても大丈夫だよ?」
心配そうに声をかけてくるラーナさんに、俺は首を横に振った。
「いや……ラーナさんがいないのなら、後方の護衛をできる人がいなくなる。今回の迷宮だと大変だから俺たち二人のほうがいいんだ」
村の出口にて、ラーナさんたちが見送ってくれた。
村は臨戦態勢であり、あちこちで明かりを灯し、周囲を警戒している。
ラーナさんはもっとも迷宮に近い北門につき、残りの三名がそれぞれ東、南、西の門を守っている状況だ。
ブールたちも俺からすれば荷物持ちくらいしかできないが、この村の中では上位の存在だからな。
俺はちらとラーナさんの後ろに立っていた男性へと視線を向ける。
「お父さん……この人がレウニスくんとオルエッタちゃんだよ。とっても強い冒険者だから、心配しないで」
ラーナさんはすっとお父さんに俺を紹介する。
厳しそうな人だが、悪い人ではなさそうに見える。
彼と目が合うと、すっと頭を下げてきた。
「……レウニスくん。こんな時間に無理を言って済まない。それと、快く引き受けてくれて感謝する」
「いえ、大丈夫です。気にしないでください」
真面目な彼に苦笑とともに返事をしてから、俺はオルエッタとともに村を出発した。
俺はブールたちに持ってきてもらう予定だった荷物持ち用の袋を背負いなおしながら、外を歩いていく。
これまでなるべく夜に活動することはなかった。
夜に活動する利点がないからな。
魔物は夜であっても目が利くことが多い。それに対して、人間の視界は非常に悪い。
魔物が有利な環境で動く理由はまったくないので、俺は夜に活動することはなかった。
「暗いですね」
「夜だからな」
「あんまり遠くまで見えないですよね」
「ああ。だから、奇襲されないように周囲には気をつけてくれよ」
「分かってます。……ああ、寝起きだとお腹空いちゃいますね……」
「一応、おにぎりはもらってきていたが、食べるか?」
俺は持ってきていた荷物持ち用の鞄をオルエッタに見せる。
彼女は笑顔とともに頷いた。
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