第67話



 夜。

 部屋で眠っていた俺だったが、違和感を覚え体を起こした。

 嫌な気配だ。


 これは、魔物のものか?

 そう思った次の瞬間だった。

 建物の玄関がノックされた。


 俺は玄関へと向かいながら、オルエッタに声をかける。


「オルエッタ。戦闘準備をしておいてくれ」

「ふえ?」


 寝ぼけ眼で気の抜けた声が返ってきたが、それ以上声をかける時間はない。

 玄関を開けると、息を切らした様子のラーナさんがいた。

 ラーナさんは一度大きく息を吸ってから、声を上げた。


「レウニスくん、大変だよ。迷宮の影響か、野生の魔物が進化し始めているんだ」

「……なんだって? その魔物たちはどうなってる?」

「周囲を荒らしているみたいだけど、まだこっちには来てないからひとまずは大丈夫だね。ただ、魔物たちもかなりぴりぴりしているから、そのうち暴れだしそうだね。それで、レウニスくんに相談したいと思ってね」

「外の状況確認と、迷宮攻略ってところか?」

「うん。夜遅くで悪いんだけど、こうなったら早めに迷宮攻略したほうがいいと思ったんだ。さすがに、魔物たちが村を襲ってきたらひとたまりもないだろうしね」


 それにしても、迷宮爆発でもないのに周囲に異常を与えるなんて……。

 少し、違和感がある。おかしな状況ではあるが、ラーナさんが嘘をつく意味も理由もない。


 ただ、迷宮に関しては分からないことも多いからな……。


「分かった。すぐ攻略に向かう」

「……ありがとね。ブールたちは私が起こしてくるからゆっくり準備してていいよ」

「起こすのはいいが、ブールたちは今回連れて行くつもりはない。村の防衛でも手伝ってもらってくれ」


 俺が着替えながら言うと、ラーナさんが驚いたように目を丸くする。


「え? でもいいのか? 荷物持ちがいないと迷宮内の荷物回収とか大変だよね?」

「大丈夫だ。最悪、ボスモンスター以外は全部回収しなくてもいいしな」

「……そうかい? それならいいんだけど。……ごめんね、村のことを思ってだよね?」

「……まあ、気にしないでくれ」


 もともと、今回の迷宮攻略ではブールたちを連れていくつもりはなかった。

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