第66話
「ごめんね、レウニスくん。私……ちょっと行ってくるね……」
「ああ、分かった。迷宮攻略は明日行うつもりだから、ゆっくりしてきていいからな」
「ゆっくりって……いつもはあんなにてきぱき攻略してるじゃん」
「たまには、のんびり攻略するのもありだろ?」
「もう、意地悪だなぁ」
ラーナさんはむすっと頬を膨らませてから、片手をあげて村の奥へと向かう。
「おい、そっちは酒場じゃないか。ちゃんと家に行けよ!」
注意されたラーナさんは、向きを変えてとぼとぼと歩き出す。
……まったく。そんなに会いたくないものなのだろうか?
家族なんて大切なものじゃ……考えながら、ふと自分に置き換えてみると、ちょっと理解できてしまった。
なので、俺も何も言えないな……。
「それじゃあ、案内するな。ついてきてくれ」
自警団の男性が快活な笑みとともに、歩き出す。
その後をついていって到着したのは、平屋の小さな家が二つだ。
「この二つの家が今空いているんだが……どうする? あんまり大きくないから、男女で分けると男のほうがちょっと狭くなっちまうかもしれないんだけど……大丈夫か?」
「別に俺は気にしないが……」
ブールたちがどうかということか。
ちらと見ると、彼らは顔を見合わせ、それから片手をあげて提案してきた。
「別に、兄貴と姉貴が一緒にいればいいんじゃないか?」
ブールがあっけらかんとアホなことを言う。
「オルエッタだって一応女なんだからあんまり失礼なことを言うな」
「いや、兄貴のほうが失礼な言い方してないか……?」
ブール、余計なことを言うな。
そう睨んでいると、オルエッタがきょとんと首を傾げた。
「私は別にどっちでもいいですよ? 狭くて大変なら、一緒で構いませんよ?」
オルエッタはあっけらかんとそう言ってくる。
……相変わらずだなこいつは。
まあ、本人が嫌じゃないというのなら、気にしないでおくか。
「分かった。それじゃあ、俺とオルエッタで使うから、そっちはそっちで迷惑かけない程度に自由にしてくれ」
「了解。そんじゃ、兄貴、姉貴。また明日」
ブールたちは快活な笑顔とともに空き家へと向かう。
俺たちも中へと入ろうとすると、オルエッタは何やら考え込んでいた。
「どうしたんだ?」
オルエッタが考え込むなんて珍しい。問いかけると、彼女はじーっと顔を覗きこんできた。
「あの、さっき私のこと、一応女とかなんとか言ってませんでしたか?」
「言ったけど、何かあったか?」
「一応ってなんですか! 私だってちゃんと女の子ですよ!」
おそっ! と思ったがこれ以上彼女を刺激しても面倒なので、俺は「冗談だ」とだけ返しておいた。
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