第71話


 彼らに支払う金よりも、俺がMP回復ポーションを使いまくった方が安上がりで済む。


 それに、万が一というのもなくなる。ブールたちだってそこそこ優秀な冒険者だが、万が一もあるからな。

 彼らに死なれたり、後遺症の残るような怪我をされる可能性もあるのだから、やはり【シャドーアバター】にお願いしてしまったほうがいいだろう。


 実際、魔法使いの中には【ゴーレム製作】系スキルを所有している人もいて、ゴーレムに荷物持ちや戦闘をお願いしている人もいるしな。


「ここが最奥だな」


 手元の地図を確認し、俺は最奥のボスフロアへと視線を向けた。

 一時間ほどで最奥までたどり着けたのは、【シャドーアバター】たちのおかげでもあるだろう。

 魔物が再出現するまでの時間はちょっとかかるため、その間に俺たちは少し進むこともできる。


 【シャドーアバター】たちに疲労という概念はないため、戦闘を終えたら全力ダッシュで俺たちに追いついてもらい、また戦闘を行ってもらう、という感じで進めた。

 経験値は俺の周囲に反映されるようなので、その点も問題なかったしな。


「私、ここまで一度も戦闘しなかったので、いくらでも戦えそうですね」

「それならよかった」


 とはいえ、移動しているだけの疲労はやはりあるので、俺たちはそこで水分補給を行う。

 同時にMP回復ポーションを左手にかける。柑橘系の匂いがするこのポーションをかけすぎたせいで、俺の左手はみかんでも食べた後のような匂いだ。


「あー、やっぱりこの匂いいいですね」

「そうか? ちょっと強くないか?」

「私、みかんとかの匂い大好きなのでっ。いいですよね、MP回復ポーション!」


 まあ、臭いよりかはな。

 相槌を打ちながら、俺は作り出していた分身たちをすべて消滅させ、スキルストーンの入れ替えを行う。


 ここから先は【シャドーアバター】たちで戦う予定はないからな。

 スキルは【劣勢強化・力】、【劣勢強化・速度】の二つを入れる。

 これで、問題なく戦えるだろう。


 この状態でも【シャドーアバター】は使用できるので、囮や陽動に使うつもりだ。


「オルエッタ、もういいか?」

「はい! いつでも行けますよ!」


 頼もしいな。

 ぐっと拳を固める彼女とともに、ボスフロアへと踏みこむ。

 中へと進めば進むほど、肌をピリピリと焼くような刺激があった。

 なんだこれは?


 普段感じたことのない違和感だ。

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