第61話


 王都に到着した次の日。

 予定だった時間に向け、オークション会場へと向かう。

 俺の狙っている商品は十五時予定ではあるが、その前にオークション会場の空気を知るために、午後から入場することにした。

 

 入り口に向かうと、人々が列をなしていた。

 その列に並びながら、俺は後ろへと視線を向けた。


「オルエッタは別に、レベル上げに行ってきてもいいんだぞ?」

「そんな寂しいことを言わないでください。私も、久しぶりにオークションを見てみたいのです」

「……久しぶりって、やっぱり来たことあるのか?」

「はい。何度か拝見させていただきました」


 ニコニコと、そしてあっけらかんと口にするが、このオークション会場は入場料が発生するので、そう易々と通えるものじゃないんだよなぁ。

 列が進んでいき、俺たちも受付の前に来た。


「入場料として一人三千ゴールドいただきます」


 ……そこらの宿なら余裕で泊まれる金額だ。

 入場料を設定するのには、様々な理由があるそうだ。


 気休めで人が入ってこれないようにする、とか。

 運営費にそもそもお金がかかっているから、とか。


 まあ、この入場料があるおかげで、変な客が来ることは少ない。

 俺は自分の冒険者カードをかざし、金額の支払いを行う。


 それから、オルエッタも同じようにお金を支払い、俺たちは中へと進む。


 会場はドーム状の造りをしている。オークションとして使われないときは大道芸などが行われている。

 席は階段状になっていて、正面には壇上がある。

 見やすい席などはすでに確保されてしまっているようだ。


 まあ、別にどこに座ろうとも、オークションへの参加はできるから問題ない。

 窓などはないため、外の明かりが取り込めない分、暗い場所は多い。

 しかし、壇上には明かりが集められているし、迷宮のように光りを放つ魔石が置かれているため、歩くうえでは問題ない。

 ちらちらと周囲を見ていると、オルエッタが小さく口を開いた。


「何だか楽しいですよね、この雰囲気」


 どうやら、俺が興奮して周囲を見ていると思われたようだ。

 俺が周りを見ていたのは、冒険者による警備の数だ。


 オークションを取り仕切っているのは、Sランククラン『アルケイク』だ。

 会場には、『アルケイク』の精鋭たちが配置されているため、まず犯罪が起こることはありえない。

 起きたとしても、恐らく何もできずに制圧されるだろう。


 三千ゴールドを払い、オークションで出品される品を盗み出そうとする事件は年間で見れば何度かあるそうだが……その一度も達成されたことはない。

 それだけでも、『アルケイク』が優れたクランであるのは分かるだろう。


 俺は、今の自分の実力と彼らとの実力にどれほどの差があるのかを知るために、周囲の観察をしていたのだ。


 あの人はAランク冒険者だろうか? あっちはBランク?

 立ち居振る舞いを見ていると、おおよそ相手のランクというか実力が分かるものだ。


 特に彼らは、威圧感でもって犯罪を抑止している部分もあるようで、力を全面に押し出している。


 そんな風に時間を潰していると、オークション会場の入り口がしまった。

 そして、パッと光が壇上へ集まり、オークションが始まった。

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