第62話
壇上には、タキシード姿の男性が魔道具であるマイクを持ち、声を張りあげた。
『さあ! 皆さん! いよいよ午後の部では、スキルが出品されます! 皆さんの望むスキルは果たして出てくるか! まずは、こちら! 【ドラゴンブレス】のスキルストーンです!』
マイクによって周囲へ音は響き、後ろの方にいた俺のもとまでよく届いた。
司会の声に合わせ、色っぽい女性が滑車のついたテーブルを押し、司会のもとまで運ぶ。
現れたスキルストーンは、見た目だけでいえば店の棚に置かれているものと同じだ。
しかし、【ドラゴンブレス】ともなれば強力なスキルだ。
すぐに、あちこちから声が上がる。
「百万ゴールド!」
「二百万ゴールド!」
「三百万ゴールド!」
オークションに参加する人たちは、席を立ち手を挙げて自分の金額を宣言していく。
金額はどんどんと吊り上がっていき、場が静かになっていく。
『さあ! 先ほどの一千万ゴールドを超える人はいますか!? いないようであれば先ほどの方で――』
「い、一千五十万ゴールド!」
「一千百万ゴールド!」
「い、一千二百万ゴールド!」
「一千五百万ゴールド」
「……」
それが、決定打となった。
対抗していた人は、そこで諦めるように席へと座る。
見事買い取った彼が、壇上へと向かい、スキルストーンを受け取った。
そのスキルストーンをすぐに使用した後、彼は満足げな様子で壇上を立ち去った。
『さあ、お次の商品は――!』
そんな風にして、次の商品が運ばれてくる。
俺がオークションを眺めているとつんつん、と腕を突かれる。
「レウニスさんが欲しい商品は【オートヒール】でしたよね?」
「ああ、そうだ」
「買い取れるといいですね。私も、応援していますね」
そうだな。
今回は【ヒール】も出るし、何とかなりそうだけど。
そんなこんなでしばらく眺めているときだった。
【パワーショット】のスキルストーンがオークションに出されたときに見覚えのある顔の男を見つけたのだ。
「三百万ゴールド!」
声を張りあげたその男は俺の兄……バルーダ・ユシーだった。
なんでたまたま同じ日に参加しているんだよ……。
俺は思わず頭を抱えてしまった。
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