第37話




 次の日。

 二十時にギルド前にいたラーナさんと合流し、中へと入っていく。


「今日はオルエッタちゃんも来たんだね」


 ラーナさんが言うように、今日はオルエッタも連れてきていた。

 オルエッタはラーナさんの声に反応して、びしっと敬礼をする。


「はい! 迷宮の競売って見てみたかったので!」

「そっかそっか。レウニスくんは昨日寂しそうにしていたしね、よかったね、レウニスくん」


 何を嘘ついているんだこの人。

 俺がじとっとラーナさんを見ると、


「えっ、そうだったんでしたか? 言ってくれれば一緒に行きましたよ?」


 オルエッタが嬉しそうに顔を寄せてくる。

 オルエッタは信じやすいんだから余計なことを言わないでほしい。


「いや、ラーナさんが勝手に言ってるだけだから。俺は別に一人でも問題ないぞ」

「えー……そうなんですか?」


 なんでちょっと残念そうなんだよ。

 オルエッタの反応に、ラーナさんは笑顔のままだった。


 ギルドへと入ると、まだ通常の業務中であるため冒険者で溢れていた。

 この時間は迷宮攻略を終えた冒険者たちが換金に来るため、特に人が多いんだよな。


 俺たちはいつもこの時間を避けるように換金などをしていたので、久しぶりの人手に若干気が滅入っていると、


「ラーナ様。こちらに来てください」


 ギルド職員がこちらへとやってきて、二階の方を示すように手を向ける。

 ギルド職員の後をついていくようにして階段を上がり、そのまま奥へと進んでいくと、一つの部屋に通された。

 

 大きな部屋だ。会議室か何かのようで、大きなテーブルが部屋の中央に置かれていて、椅子がいくつもあった。

 そこには冒険者と思われる人たちが着席している。三人×三チームといった感じで席に着席していて、俺たちも一つの隅を陣取るように腰掛けていく。


 冒険者たちはこちらを観察するように見てきていて、それは俺も同じだった。

 俺が注目したのはあるチームだ。そこは唯一四人で参加していて、おまけに『ハンターブロー』を示すバッヂをつけていた。


 クランというのはクランごとに自分の所属を示す模様を持っているものだ。

 あの男というかあそこに座っている四人組は、『ハンターブロー』の冒険者というわけだ。


 残り二つのクランは有名所ではないようだ。今回、一番のライバルとなるのは恐らく『ハンターブロー』だろう。

 そんなことを考えながらそちらを見ていると、向こうもこちらを見てきた。

 そして……そのとき。一人の女性がぱっと目を輝かせ、席を立った。


「ら、ラーナさん!? どうしたんですか!?」


 桃色の髪を揺らしながらこちらへと迫ってきた可愛らしい女性は、ラーナさんの前まで行くと頬を染めながらじっと見ていた。

 興奮した様子の彼女に、ラーナさんは苦笑を返す。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る