第38話



「あれ? フィンちゃんだね。どうしたの?」

「な、名前……覚えてくれていたんですね!」

「まあ、将来有望な新人さんだって聞いていたからね。忘れられないよ」

「え、えへへ……そうですか」


 フィンと呼ばれたことは嬉しそうに頬をかいている。

 本当に人気者だな、ラーナさんは。


「フィンちゃんも、今日は迷宮の競売に来たのかな?」

「は、はい……っ! も、もしかして……ラーナさんもですか?」

「そうだね。こっちの子たちが、迷宮の攻略をしたいっていうんで代表者として駆り出されたってわけだね」

「……駆り出された? ラーナさんをパシリにしているってことですか?」


 フィンの雰囲気が一瞬で変わり、俺をじっと睨みつけてきた。

 なぜ俺を……オルエッタがリーダーかもしれないじゃないか。

 俺が横目でオルエッタを見ると、彼女は途中購入してきたおにぎりを嬉しそうに頬張っていた。ふざけんな。


「いや、そういうわけじゃなくてね。彼ら、急成長したこともあって、ギルド側からちょーっとまだ認められてなくてね。それで私が代理になったわけで――」


 しかし、フィンはラーナさんの話など聞かず、ずいっとこちらを見てきた。


「……あんた、ステータスは? 職業は?」

「……答える必要あるのか?」


 喧嘩腰のフィンに、答える義理はない。

 俺の言葉に、フィンは苛立った様子で眉尻を上げる。


「あたしは『ハンターブロー』のフィン。職業はランサーで、ステータスはオール800越えよ。あんたはいくつなの?」


 冒険者カードに書かれているステータスを見せつけてくる彼女に、俺はため息を返す。


 面倒な奴だな。

 ブールたちのように武力に訴えてくるのならまだやりやすいが、こう回りくどいとな。

 ここで黙っていても絡まれるだけだし、彼女の言う通りにしようか。


「職業は暗黒騎士。ステータスは……オール700くらいか?」

「……暗黒騎士? 冒険者カード見せなさいよ。口ではいくつでも言えるでしょうが」

「……ほい」


 もうどうにでもなれ。

 そんな気持ちとともに俺が冒険者カードを見せると、フィンは目を吊り上げた。


「ステータス、オール200くらいの雑魚じゃない! 嘘つくんじゃないわよ!」

「別に、なんでもいいだろ?」

「なんであんたみたいな雑魚がラーナさんを連れまわしているのよ! 貴重なラーナさんの時間がもったいないでしょう!?」

「ちゃんと報酬も支払っているし、それでラーナさんも納得してる。文句を言われる筋合いはないと思うが?」


 俺がそういうと、フィンは目尻を吊り上げる。

 さらに何か言ってこようとしたフィンに、ラーナさんが声を挟んだ。

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