第39話



「フィンちゃん。そういう態度良くないって何度も教えたよね」

「ら、ラーナさん……そ、そのラーナさんの鍛錬の邪魔とかになっちゃうと思って……あたし……」

「私のこと気遣ってくれたのはありがとね。でもね、そんな態度とってると、周りの人も困っちゃうし、ついてこなくなっちゃうよ? ほら、頭冷やして、ね?」

「……」


 ラーナさんが落ち着いた口調でそう言うと、フィンはとりあえず静まってくれた。

 しかし、どうやら俺のことは気に食わないようで、一睨みしてから去っていった。


「……ああ、もう。ごめんね、レウニスくん。なんか、フィンちゃんは私のこと凄い慕ってくれてね。何度もパーティーに誘われてたんだけど、断っていたから……それで色々爆発しちゃったのかもね」

「まあ、実害出たわけじゃないから、別に大丈夫だ」

「本当にごめんね? フィンちゃんは周り見えなくなって暴走するとあれだけど、基本良い子だから」


 ちらと『ハンターブロー』の方を見ると、フィン以外の人たちがフィンに気づかれない程度に頭を下げていた。

 フィンだけは不機嫌そうにこちらを睨んでいたが。

 フィンがパーティーから省かれていないのを見るに、ラーナさんの言うこともあながち間違いではないのかもしれない。


 ……可愛い嫉妬、と納得しておこうか。

 俺がため息をついていると、何やら意味深な表情をしているオルエッタがフィンをじっと見ていた。


「あの子……もしかして……」

「どうしたんだ?」

「フィンさん。お腹空いていたのかもしれませんね」

「……はぁ?」

「お腹空くと、なんだかむかむかしますよね? 今の時間って二回目の夕食の時間ですし、お腹が空いてきたのかもと思いまして……おにぎり、分けてあげましょうか?」

「気にするな。ああいう子なんだよ」


 オルエッタの能天気な言葉に、俺は苦笑を返しながらオークションが始まるまで待つことにした。





 しばらくして、入り口の扉が開いた。

 視線を向けると、厳格そうな男性がそちらにはいた。左右にはギルド職員もいて、その男性が立場ある人なのは一目で分かった。


「王都のギルド長だよ。昔はSランク冒険者だったみたいだよ」


 俺の耳元でからかうように囁いてきたのは、ラーナさんだ。

 ……この人が王都のギルド長なのか。

 王都のギルド長ともなれば、さすがの迫力だ。


 年齢によるステータスの劣化はあるだろうが、それでも今でもBランク程度はあるのではないだろうか?

 ギルド長が来たことで、場の空気も引き締まり、ラーナさんからの睨みつける攻撃もなくなった。


 ギルド長は一番奥の席へと座った。

 皆の視線が集まったところで、ギルド長が声を張り上げた。


「それでは、これよりCランク迷宮、トレント迷宮の攻略権の競売を開始する!」


 ギルド長の一声によって、競売が始まる。

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