第40話
Cランク迷宮の相場としては、四百万から五百万ほどで落札されることが多い。
今回の俺は八百万までは出してもいいとラーナさんには伝えているので、恐らく競売で負けることはないだろう。
まあ、本当に八百万円での落札となれば、ちょっと赤字なのでオルエッタの【女帝の威光】による金稼ぎが必要になる可能性が出てくるんだけど。
ラーナさんは考えるように顎に手をやり、それから周囲を観察していた。
その時だった。
どん、とテーブルに拳が振り下ろされる。
その音に皆の注目が集まる。見れば、フィンが強気な笑みを浮かべている。
それは、主に俺に対してのように見えた。
「細かいことはなしよ! うちは六百万ゴールドで落札するわ!」
宣言すると、他の冒険者たちはパーティー内で顔を見合わせている。
皆の表情は悪い。
もしかしたら、五百万ゴールドほどしか用意していないのか、あるいは用意していたとしても金額的にギリギリなのかって感じだろうか。
フィンの勝気な笑みは、絶えずこちらへと向けられている。
勝ち誇ったような笑みは、腹立たしい。
ただ、六百万ゴールドならば、返せない金額ではない。
ラーナさんを見ると、こくりと頷いて手を挙げた。
「それじゃ、うちは七百万ゴールドで」
「え!? ら、ラーナさん!? 本当にそんなにお金あるんですか!?」
「まあね。ほら、他の人たちはどうかな?」
ラーナさんは盛り上げるようにそう呼びかけたが、他の冒険者たちは首を横に振っていた。
それに、フィンの表情も険しい。拳を固め、わなわなと震えていた。
彼女の両目はきりっと俺を睨みつけたままだ。
なんで俺だけだ。
フィンは睨みつけてばかりで、さらに金額を上乗せしてくることはない。ただただ、悔しそうに拳を振るわせて、威嚇するように喉をならしている。
俺の兄と違い、そこはさすがに常識的な判断ができるようだ。
それにしても、七百万ゴールドか……。
予定では六百万ゴールドくらいで済むと思っていたんだけど、百万も損だぞ。まったくもう。
ギルド長はしばらくそちらへと視線を向けていたが、
「それじゃあ、トレント迷宮の攻略権はラーナのパーティーの物となる。攻略は遅くても一週間以内に終えるように。以上、解散だ」
そう発言し、競売は終了した。
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