第41話


 ……フィンがいきなり落札金額の最大に近い金額を言ってしまったせいで、サクッと終わってしまったな。


 ギルド長はその言葉を最後に席を立ち、部屋を去っていった。

 他の冒険者たちもぞろぞろと去っていく中、フィンがこちらを見て、舌打ちをした。


「……邪魔するんじゃないわよ。それに、ラーナさんの貴重な時間を無理やり使って……」


 そんな捨て台詞とともに、フィンが部屋を出ていった。


「ああ、もうフィンちゃんは変わってないね……。悪いねレウニスくん、オルエッタちゃん。私のせいで不快な気持ちにさせちゃって」


 申し訳なさそうに両手を合わせてくるラーナさんに、俺は首を横に振った。


「ラーナさんに問題があるわけじゃないから、気にしないでくれ」


 俺としては、攻略権を手に入れたことで十分だ。

 申し訳なさそうなラーナさんとともにギルド一階の受付に行き、攻略権の証明書をもらった。


 よし、これで迷宮攻略によるレベル上げが本格的に始められる。

 ギルドから外に出たところで、ラーナさんがこちらに顔を向けてきた。


「出発はいつにするのかな?」

「明日一日で攻略するつもりだ」

「え? い、一日で?」


 俺の言葉に、さすがのラーナさんも驚いたようだ。


「事前の情報を見た限り、そんなに深い迷宮じゃないみたいだしな。それに何度か迷宮の奥までは行ってるから問題ないと思う」


 まだ自由に出入りできるため、迷宮には何度か足を運んでいる。

 レベル上げついでに中を歩いてみた感じ、そんなに苦労はしないだろう。

 

「なるほどね。確かにレウニスくんの能力ならそのくらいはできるかもしれないね。それじゃあ、明日二人の宿に集合でいいかな?」

「そうだな。八時くらいに来てもらっていいか?」

「了解。それじゃ、また明日ね」


 ラーナさんはそう言って手を振りながら去っていた。

 その姿を見送りながら、俺たちも宿へと向かう。


「迷宮の攻略……楽しみですね!」

「楽しみっていうか……まあ、さっさと終わらせて次に行かないとって感じだな」

「そうなんですか?」

「経験値をさっさと稼ぎたいからな」


 とりあえず、宿に戻ったらブールたちにも話をしないとな。

 彼らには以前伝えた通り、荷物持ちとして参加してもらう予定だ。


 一応、今日の競売で勝ち取れば、すぐ攻略に向かうことは伝えてあるので、予定は空けておいてくれていると思うが。


 一日で攻略するにしても、荷物持ちは欲しい。道中の食糧などはもちろん、倒した魔物の素材などを回収してもらう必要があるからな。


 普段の俺たちは、自分たちで荷物の持ち運びを行っているが、さすがにボスモンスターを含めてたくさんの魔物と戦う必要があるため、専門の人を用意しておきたい。


 迷宮攻略、か。

 これまでなし崩し的に攻略のようなことはしてきたが、初めて自分で受注しての攻略だ。


 オルエッタが言うようにちょっとだけ楽しみな気持ちがあるのも、嘘ではない。

 とはいえ、楽しんでばかりもいられない。

 俺はラグロフを助けるために、最善の行動を取り続けているんだ。


 無駄なく、攻略しないとな。

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