第51話

 驚いた様子のベヨングと、彼らの仲間たちであったが、すぐに呆れたように声をあげる。


「なんだよ、ベヨング。別にスケルトンナイト大したことなかったみたいじゃねぇか」

「……らしいな」

「リーダーの勘が外れるなんて珍しいっすねー」


 能天気な会話を続けている彼らを、俺は絶えず観察していた。

 ベヨングがもっともこの中では強いはずだ。


 だが――その強さもあまり感じない。

 先ほど、ボスモンスターを倒したからだろうか? レベルアップとステータスの成長が、彼を格下とみているのかもしれない。

 ベヨングは確かに、CランクといってもギリギリCランクといった人だ。

 

 となれば、今の俺もCランクの下位くらいはあるのかもしれない。

 ベヨングたちとの対立は、どうやっても避けられないだろう。

 ならば、ベヨングをさっさと気絶させてしまった方がいい。


 彼らがゆっくりと近づいてくる中、俺はそのチャンスをじっくりと伺っていた。


「それにしても、スケルトンナイトが大したことないっていっても、Dランクの女に負けるなんてな」


 ……どうやら、スケルトンナイトを仕留めたのはオルエッタだと思っているようだ。

 確かに、優秀な装備品と彼女のステータスの高さから考えれば、それが一番可能性としては高いだろう。


「そうだな。まあ、でも、こうなったら仕方ないだろ? 女はやってから殺す。それ以外は皆殺しだ。いいな?」


 ベヨングは、下品な視線をオルエッタへと向けている。オルエッタは苛立った様子で立ち上がった。


「あなたたちは本当に私たちを殺そうとしていたのですか?」

「ああ?」

「だとしたら、犯罪ですよ! 大人しく捕まってください!」


 びしっとオルエッタが指を突きつけると、ベヨングたちはぽかんとした、ケラケラと笑った。


「むっ、何がおかしいんですか! 悪いことをしたら、反省する! それが正しいことでしょう!?」

「はは! そんなことするわけねぇだろ! オレたちは、これまでだってたくさん同じようなことをしてきたが、バレちゃいねぇんだ。バレなきゃ犯罪じゃねぇんだよ!」


 ……まあ、それは正しいことだけどな。

 こんな犯罪者たちに通じることじゃないんだよ。


「迷宮の中じゃ、何をしたって証拠は残らねぇ! ここには騎士も『影の者』の連中もいやしねぇからな」

「むっ! むむむっ! それでは、いる場所まで行きましょうか!」

「行くわけねぇだろうが!」


 ベヨングが声を荒らげ、近くの男にスキルを発動する。

 ……先に、動かれてしまったか。

 俺は彼らを気絶させるために動こうとしたところで、ベヨングたちの動きが固まった。


「そこまでにしてください。『ピアスアーマー』」

「……な、なんだてめぇ? 何をしやがった?」

「僕の糸で、少し動きを拘束させていただきました」


 声を発したのは、キューダだった。

 目を凝らすと、確かに糸のようなものがベヨングたちの体にまとわりついていた。

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