第52話
「て、てめぇ……まさかステータスを偽っていたのか!?」
「そうですね。ギルドに協力してもらい、偽装させてもらいました」
鋭い声を放つキューダに、ベヨングの表情は青ざめていく。
「偽装って……そんなのが許されているって……ま、まさかてめぇは……っ!」
キューダの言葉に、俺もなんとなく彼の正体を察した。
ベヨングが顔を青ざめたのに合わせ、キューダの体を光が包んだ。
先ほどまでの彼とは変化し、そこには仮面をつけた男性がいた。
「私は『影の者』、コードネームナンバー48と申します。どうしてここにいるのかは、分かりますかね?」
「そ、それは――」
ベヨングが言いよどむ中、ちょんちょんとオルエッタが肩を突いてくる。
「……なんだ?」
「……どうしてSランククランの方がこんなところにいるんですかね? お金に困っているのでしょうか?」
「……お金に困っているから偽装して依頼を受けたと思っているのか?」
「可能性は、あると思います」
「ねぇよ。……大方、『ピアスアーマー』に疑惑の目が向いていたから、調査に来たんだろうさ」
「さすがレウニスさんですね。まさに、そのとおりです」
キューダ――ナンバー48はにこりと微笑んだ。
「ベヨング。あなた方はうまく隠しているつもりみたいですが、それでも怪しい箇所は多くありました。ですから、我々がこうして動いたというわけです」
キューダが淡々と伝えていくと、ベヨングは悔しそうに声を荒らげる。
「ち、ちくしょう……っ!」
悔しそうに彼が声を荒らげた次の瞬間――。
強い殺気が放たれた。
その殺気は、ベヨングから放たれたものだ。彼の悔しそうな表情はすべて演技だったようだ。
土の弾丸がまっすぐにこちらへと飛んできた。ベヨングが得意とする土魔法だ。
俺ではなく、キューダを狙ったのは彼を仕留めればまだ逃げ切れると考えているからだろう。
しかし、土の弾丸はキューダにあたることなく、弾かれた。
「なっ!? う、嘘だろ……オレの魔法がッ!?」
ベヨングが言葉を言い切るより先に、キューダが動きその胸元へと拳を叩き込んだ。
ベヨングは意識を失ったのか、一言も発することなく倒れる。
さすがの腕前だ。
それを見届けたキューダが牽制するようにベヨングの仲間たちを睨むが、彼らは青ざめたまま動かない。
キューダが片手をあげると、どこからともなく黒装束の者たちが現れ、ベヨングとその仲間たちを連行していく。
「では、あなた方はこれから『影の者』で『処理』をしますので。さて、レウニスさん、オルエッタさん。色々と巻き込んでしまい、申し訳ございませんでした」
ベヨングたちはキューダの仲間たちが連れていき、キューダは申し訳なさそうな表情とともに頭を下げてきた。
……本当にな。
ただ、彼らのおかげで安全が守られている部分もあるため、怒るわけにもいかないんだよなぁ。
「迷宮の構造も知っていたのか?」
「ええ、そうですね。すべて、把握しておりました。ここに大量の魔結晶が眠っていることも情報としては入っていましたので、利用させてもらったというわけです」
「……そうか。なら、スケルトンナイトの相手をした時に手を貸してくれても良かったんじゃないか?」
ナンバー48の実力を見るに、スケルトンナイトならばどうにでもできただろう。
仮に、一人で倒せなくとも、一緒に戦ってくれればもっと楽に倒せただろうし。
俺がちくりと言うと、彼は申し訳なさそうに頭を下げた。
「まだ、決定的証拠は掴んでいませんでしたので、外からこちらを伺っている可能性も考えられましたので……万が一、あなたが死ぬかもしれないとなった場合はもちろん手を貸すつもりではありましたよ」
「……なら、無駄にはりきりすぎたってことか」
「そのおかげで、こうして尻尾を掴むことができました。感謝していますよ」
ナンバー48は、ナンバー48として仕事を行っていたのだから、仕方ないか。
結局、俺は二度も囮にされたってわけか。
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